内容説明
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。―はずだった。ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。
著者等紹介
米澤穂信[ヨネザワホノブ]
1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第五回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。独自の視点で「青春」を描き、かつミステリとしての構築度も高い作品をコンスタントに発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mikea
119
リョウが存在していない世界に来てしまった、・・・リョウの存在がないことで目にする様々の事。自分がいた世界より明らかによい方向に進んでるってリョウ自身が感じたら。あのタイミングでのメール。一人で東尋坊に行ったら魔が差すっていう少年の言葉。ってことは哀しい結果を選択したのかなって思いました。切ない。2011/07/09
七色一味
96
読破。ボトルネック──流入/流出の妨げとなる部分のこと。瓶の首の意。そして、この物語においては、二つの世界を大きく変えてしまった要因を暗に示している。つまり、主人公こそがこの物語のボトルネックなのだと。最後の言葉は、主人公を「何か」に向けて解放するものとなっている。それによって押し出された先が、読み手にとってのハッピーでなくても、主人公にとってはハッピーなのかもしれない。「そんな現実」を見せられた以上は。2012/08/16
ダイ@2019.11.2~一時休止
90
2つの世界の違いを姉弟の違いで考えさせられるチョット切ないお話だった。2014/05/21
PSV
63
青春残酷物語。白穂信から一転、黒へと転化するトコは鳥肌もの。「なにもそこまで…」とは思うが、そこまで徹底してこその自己否定≒現状の肯定なのかもしれない。ともあれ、自分ならきっと、わかった時点で自殺してるな、というレベル。 ★★★★☆2012/05/06
pika
63
結末のあまりの救いようのなさに愕然とした。「自分が生まれなかった世界」に紛れ込んでしまったリュウは自分の家で「生まれてこなかったはずの姉」に会う。しかもこちらの世界では両親もうまくいってるし、2年前に死んだはずの恋人も生きている。自分のいない世界ですべてがうまくいっている事実を突きつけられ、自分の存在を否定されてしまうリュウの最後の選択は??さくさく読めるし、ミステリーとしては面白いけど重すぎる・・・。2010/06/29