内容説明
「ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。…」世界文学の最高傑作と呼ばれながら、ここまで誤解多き作品も数少ない。中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリでありロード・ノヴェルであり、今も論争が続く文学的謎を孕む至高の存在でもある。多様な読みを可能とする「真の古典」の、ときに爆笑を、ときに涙を誘う決定版新訳。注釈付。
著者等紹介
ナボコフ,ウラジーミル[ナボコフ,ウラジーミル][Nabokov,Vladimir]
1899‐1977。帝政ロシア時代のサンクト・ペテルブルグに生まれる。父親は政治家。ロシア革命で祖国を離れ、ベルリン、パリでの亡命生活を経て、1940年にアメリカに渡り、英語でも創作活動を始める。晩年はスイスのモントルーの高級ホテルで暮らした。ロシア・アメリカ文学史上に屹立する異形の大作家
若島正[ワカシマタダシ]
1952年京都市生れ。京都大学大学院文学研究科教授。『乱視読者の帰還』で本格ミステリ大賞、『乱視読者の英米短篇講義』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
491
様々な要素が盛り込まれながら、それでいて凝縮度の高い小説。プロットの上からは、全米を車で駆け巡るロード・ノヴェルであり、追跡行を描いたものである。そして、作品の中に一貫して流れているのは、ロリータへの奇妙な愛と執着だ。ドリーはロリータの一種の表象に過ぎないようにも思える。ハンバートの愛は一途なまでに直線的であり、ドリーがそれに応えることはない。ハンバートは殺人者として収監されるが、ムルソーほどではないにしても、そこにはやはり強い必然性が見られない。畢竟は、ハンバートの内面省察の物語なのだろう。難解な小説。2015/02/02
遥かなる想い
200
中年男と美少女の異常な性愛を描いた物語である。 男が語るロリータとの日々 …ひどく 淫らで 刺激的だが、中年男の 盛り上がりが なぜか滑稽に読める。 歪んだ純愛の行き着く果ては とても 哀しい…男視点の描写の色が強く、ロリータの 美しさが 描き切れていないのが、少し残念。2019/03/31
のっち♬
167
「絶望的なまでに痛ましいのは、私のそばにロリータがいないことではなく、彼女の声がその和音に加わっていないことなのだ」━中年の大学教授と、彼が一目惚れしたあどけない少女の関係が獄中手記の形で綴られる。言葉遊びを多用した独特の文体で、細部に至るまで多様なニュアンスが込められた凝った言語演出が施されており、所々場面把握がしづらい。これらは、幾つもの言語を習得した著者の亡命経歴の賜物だろう。一方で、彼の情愛や執着が土臭く乾燥した空気と共に臨場感豊かに伝わってきて、容赦ないグロテスクさの中にも哀しみと煌めきがある。2017/08/31
優希
145
万華鏡のような作品だと思います。中年男性の少女への倒錯した愛を描くと同時に、ミステリーやロード・ノベルの色合いも見せる純文学と言えるでしょう。ハンバートと道ならぬ関係に陥ったロリータことドロレス、2年に渡る逃避行。モーテルを渡り歩く2人に絶望的な未来が見えるのには悲しくなりました。そして、奪われたロリータを自ら見つけ出すため、連れ去った人物を特定して殺害しようとする想いがありとあらゆる形で張り巡らされ、目的を達成するのが凄い。背徳、禁断、犯罪といった言葉で語れないR18的作品。癖はあるけれど名作です。2016/04/10
まふ
134
これまで、できれば読まずに済むことを願っていたがやむを得ない事情によりついに読んでしまった作品。内容的にはいまさら驚くべきこともなかったが、この作者の饒舌、説明したがりという性格がよく現れていたように思う。確かに12歳の少女を執拗に玩賞し弄ぶという経験は文学史上稀有の事件であろうし新たな世界だったろうが、と言ってこれを今日「文学作品」として読むべきか通俗小説であるかはどちらでもいいような気がする。G1000。2023/10/16