出版社内容情報
愛しい女の赤い唇、そこから滴る悪魔の囁き……。永遠の情熱の物語。
南国スペインの情熱を象徴するカルメン。純朴で真面目な青年ドン・ホセは、彼女と出会ったために運命を狂わせられる。嫉妬、決闘、殺人、そしてついにはカルメンをも殺してしまう……冷静簡潔な筆致でそのあやしいまでの美しさを描く表題作。奴隷船を襲った惨劇を巧みな構成で組み立てた『タマンゴ』。裏切り行為をしてしまった我が子を銃殺する『マテオ・ファルコネ』など全6編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
120
冷静簡潔な筆致でロマネスクな事件を濃厚に描いた表題作を含む6編。ジプシー女のカメレオンな生き方に、相反した性質を併せ持つ著者が重なったり。民族間の緊張を体現した芯の通った人物像も魅力的。『タマンゴ』『マテオ・ファルコネ』は26歳作ながら洗練された語り。『オーバン親父』は神職の不埒な生態を暴露した風刺作。自らの嫉妬の体験を如実に反映した『エトリュスクの壺』は懐疑・悲観主義な著者のルーツが垣間見れて興味深い。『アルセーヌ・ギヨ』は不要にも程がある宗教観の押し付けと三つ巴が不幸へ引き摺り込む一際冷笑的な充実作。2022/10/23
びす男
69
いずれもオチがしっかりとついていて面白い。本人が望んでいないのに、ある結末にどんどん引きずりこまれる、という筋が多い。登場人物とともに、読み手も引き込まれてしまう。それにしても、悪女にはまると大変だ。2017/04/14
みっぴー
39
短篇集です。表題作の『カルメン』が断トツで面白かったです。ジプシーのカルメンと関わったせいで、岩が転げ落ちるように悪に手を染めていく主人公。何度もカルメンに裏切られてはよりを戻し、悪の道をまっしぐらに進んでいきます。カルメンみたいな良心の欠片すら無い根っからの悪女って、本当に読んでて楽しいです。ラストの『アルセーヌ・ギヨ』は、一人の男をめぐって仲の良かった女二人が一触即発の危うい関係に発展していく様子がかなりえげつなく描かれていて、作者の観察眼に感心しました。うん、女って怖い!2016/02/06
fseigojp
33
カルメン:今昔物語を題材にした芥川の偸盗とどこか似ている。熱愛して盗賊の身に落ちたのに裏切られ、思い余って殺してしまう竜騎兵青年の悲哀。タマンゴ:フランスのアフリカ奴隷貿易の実態。奴隷商人のタマンゴは酔っ払い妻まで売り払い、あわてて取り戻そうとして、自らも奴隷にされた。復讐には成功するが、船の操縦のできる人間まで殺してしまう!マテオ・ファルコネ:私の息子に裏切り者はいらない。オーバン神父:貴族の中年女性に取り入り出世する美青年神父の俗悪。2015/09/21
ビイーン
32
カルメンは凄くインパクトがあって読んだら忘れられなくなる女性だ。やめればいいのに純朴な青年ドン・ホセは悪女カルメンを追い掛けて振り回され、人生を狂わせられる。カルメンは流浪の民ジプシー。ジプシー達は自らの運命を占い未来を予知するのか。以前読んだ「百年の孤独」で見たマジックリアリズムがここにもあるようだ。2019/11/27