内容説明
物書きとして生計をたてられるようになったデイヴィッドは、ドーラと結婚して安定した生活をおくっていた。しかし、そんな彼にうち重なる不幸が訪れる。愛するドーラの死、訣別した友スティアフォースの遭難。傷心のうちに外国を彷徨う彼の心にうかぶのは幼い日のアグニスとの至上の愛の想い出だった…。幾多の出会いと死との劇的場面に彩られたディケンズの自伝的長編の完結編。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
222
本物語の最終巻(第4巻)。主人公デイヴィッドが22歳~30代半ば(推定35,6歳)までを描いている。19世紀におけるイギリスの平均寿命は、都市部で40~43歳で農村部では43~46歳であった。これ程の短さは、低年齢層の死亡率の多さを物語っている。産業革命以降、都市部おいて人口集中・環境悪化にともなう感染症をはじめとする不健康状態の蔓延がしたいたことに起因する。さらに労働力に児童を用いたことも影響している。現在のような厳格な労働者規制法がなく、劣悪な環境下(炭鉱や綿工場)において重労働を強いたからである。2021/12/03
NAO
64
【誕生月にディケンズ再読】誰もがユライア・ヒープに力を奪われ妙に卑しめられていく中、ついにユライアの悪事が露見。その瞬間に空気が変わったと感じるほどユライアの影響力は凄まじかったわけだが、彼のような人間が出来上がってしまったということも、イギリス社会の大きな問題だと言えるだろう。デイヴィッドについては、かなり早い時点で予想していた通りのラスト。いくつもの伏線を次々回収していくディケンズの手法はかなり芝居がかっているけれど、大団円へ向かう怒濤の流れの中にどっぷりと身を任せて楽しめばいいと思う。2017/02/09
優希
40
物書きとして生計を立てられるようになり、安定を手にしたデイヴィッド。しかし幸せは長くは続かないのでしょうね、重なる不幸が彼を襲います。多くの出会いと死と直面した物語。展開はベタですが、大河ドラマ的な展開で読み終えた達成感があります。2024/01/24
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
32
やっと読み終わったー!亡くなってしまった愛する人たちや親しい人たち、それなりに努力して成功する主人公デイヴィッド。刑務所に入ってしまった人やオーストラリアに移住していった人たち。ミスター・ペコディーの心の広さに参ってしまった。この様な善人を描くのがディケンズ。それにしても世の中が落ち着かない時は古典ものがいいと思う。何となく落ち着く。2020/05/04
田中
31
赤ちゃん奥さん「ドーラ」が、最期に、「アグニス」にお願いする会話。夫ディヴィッドは何も知らなかった。婚姻したアグニスが知らせ語り、二人が泣く。僕も嬉し涙と、悲し涙がこぼれる。ミスタ・ペゴティーがハムのお墓に行き、その場にある草や土を「魂」の一部のように持ち帰るのだ。エミリーのお土産のためと言うところが、また、心が熱くなる。はるか遠方のエミリーも静かに祈ってくれることだろう。ミコーバー夫妻の浮沈変転ぶりにも目が離せなかった。ディケンズを読むと必ず涙腺がもろくなる。終わるのが惜しくなる素晴らしい物語だった。 2021/08/29