感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
341
上下2巻しかないのだが、上巻の冒頭から暫くは、あたかも大長編の始まりの如き様相を呈している。主要な登場人物もなかなか登場しないし、登場した後も複数のままで、しかも主人公たち以外にも重要な人物群(例えばドファルジュ等)が配されている。畢竟、この小説はどうやら群像劇として展開していくのだろう。18世紀後半の騒然たる二都を描くために、意図的にそうした方法が選ばれたと思われる。下巻では、主人公像はもう少し収斂しつつ、しかしやはり群衆を活写することで、時代のうねりを描いてゆくのだろう。大いなる波乱を含みつつ下巻へ。2016/03/30
遥かなる想い
251
ディケンズの名作。18世紀フランス革命前の イギリス・フランスの風景が蘇る。 時代背景も新鮮で 物語の展開もうまく 登場人物も 魅力的なのが素直に楽しい..国家も法も 未熟だった時代の裁判・価値観などが やや芝居がかった語りとともに 印象的な 上巻だった。2017/02/18
ヴェルナーの日記
85
物語はフランス革命当時のパリとロンドンを舞台にした物語だが、前評判どおり、ディケンズの特徴は、描写力に優れていることだと思う。とくに人物描写の冴えは、特質べきものがあって、この描写力によって作品を成立させているのではないだろうか。その分、少々の欠点として作品としての物語性の整合性が取れていたことだが、これは読者個人の好みによって評価が分かれるだろう。2015/04/01
chimako
71
比喩に比喩を重ね、その上持ってまわった状況説明……主語を忘れるようなくどい表現……舞台となっている国の歴史にも疎く、生活習慣や人々の暮らしぶりもよくわからない……こんな読者には何を言わんとするのか理解し辛い。懸命に字面を追い、何とか物語に入っていこうと試みるが難しい。その中で、墓盗賊ミスター•クランチャー父子の非道に憤り、虐げられる妻であり母であるミセス•クランチャーにイライラする。何をされても自ら夫の元を去るような真似は出来なかった時代では有るのだろうが。さて、物語はやっと動きを見せ始めた。下巻へ。2015/09/21
Willie the Wildcat
53
フランス革命の齎す光と影。理不尽を合理とする過程の理不尽も、過渡期故の混沌の一端。1人1人が背負う過去の清算。中でも印象的なのが、ドクトルとチャーリーの距離感。義と不義の狭間に愛情も絡む絆模様も、明かされない”過去”が陰となっている気がする。陰と言えば、カートン。どこか自暴自棄だが、ルーシーに救いを求める姿勢が、混沌とした世の中を反映しているかのよう・・・。心の矛盾との葛藤に、生の真理と人間性の追求。2015/05/09