内容説明
孤立無援で事件を追う馬見原は、四国に向かった。捜査のために休暇を取ったのだ。彼はそこで痛ましい事実に辿りつく。夫に同行した佐和子は、巡礼を続ける者の姿に心を大きく動かされていた。一方、東京では、玲子のことを心配する游子と、逃避行を続ける駒田の間に、新たな緊張が走っていた。さまざまな鎖から身を解き放ち、自らの手に人生を取り戻そうとする人びと。緊迫の第四部。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960(昭和35)年、愛媛県生れ。’86年、「白の家族」で野性時代新人文学賞を受賞。映画の原作、脚本を手がけたのち、’93(平成5)年、『孤独の歌声』が日本推理サスペンス大賞優秀作となる。’96年、『家族狩り』で山本周五郎賞を受賞。2000年、『永遠の仔』で日本推理作家協会賞を受賞している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
273
4部は、游子、馬見原、浚介たちの心の彷徨を描く。 過去のトラウマに苦しみながら、苦闘する様は痛々しい。 そして、大野・山賀葉子夫妻の過去の哀しい事件とその後…ドラマではあまり描かれなかった内面描写が そこにはあり、巡礼する人々とともに、印象的な4部だった。2014/09/24
ゴンゾウ@新潮部
112
物語が大きく動き出した。家族とは?夫婦とは?親子とは?本当に考えさせられる。あと一冊しかないのに答えがでるのだろうか。2015/01/09
抹茶モナカ
107
不穏な空気感で突き進んで来た物語も終盤に入った。大野・山賀の過去を馬見原は探って行く。游子が刺される。いろいろ不満を感じつつ、読み進めて来たけれど、ガッチリ心を掴まれてしまって、サクサク読んでしまった。気づいたら、もう終盤で、これは熱中している、って事かな。佐和子が心配だなぁ。2014/06/30
修一郎
99
ストーリーについては展開読めるけど、テーマの「家族」については、重量級の問いかけを畳み掛けられます。長いセリフの連続。うーん読みづらくはないけど頭は疲れる。「家族=愛」はそうだとして、じゃあ「愛=赦し」なのか。「救い」は「愛」とは限らない?「家族=救い」は絶対ではないと? いつもならば生きるのに不器用な主人公に共感してしまうところなのですが、今回は共感できるのが人がいなくて困ってます。(○○、家族と向き合うより、組織の論理を優先させてしまう自分を自分で容認していないか?)なんて…へとへとになって第5部へ2014/08/14
かみぶくろ
92
第四部。物語の核となる連続家族心中事件は、その容疑者らしき人物の過去と背景が明かされ、大きく進展する。一方で、三人の主人公が辿るそれぞれのプロットは、相互に干渉し合いながらもなかなか希望が見えてこず、もがき苦しみながら一進一退を繰り返す。そんな不器用な彼ら彼女らの苦境の連続に、読者は自分の実人生を重ねながら、固唾を飲んで行く末を見守ることになる。いよいよ次がラストだが、この錯綜する物語をどのように収束させていくのか、とても楽しみである。2020/04/29