内容説明
あの日の光景をふり払おうと酒に溺れていた浚介は、さらなる痛みを味わう。游子は少女をめぐり、その父親と衝突する。亜衣は心の拠り所を失い、摂食障害から抜け出せずにいる。平穏な日々は既に終わりを告げていた。そして、麻生家の事件を捜査していた馬見原は、男がふたたび野に放たれたことを知る。自らの手で家庭を破壊した油井善博が―。過去と現在が火花を散らす第二部。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960(昭和35)年、愛媛県生れ。’86年、「白の家族」で野性時代新人文学賞を受賞。映画の原作、脚本を手がけたのち、’93(平成5)年、『孤独の歌声』が日本推理サスペンス大賞優秀作となる。’96年、『家族狩り』で山本周五郎賞を受賞。2000年、『永遠の仔』で日本推理作家協会賞を受賞している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
256
第二部は、主要人物の 心の迷いを描く。夢と現実を 対比させながら、人間の酷さを 描写していく。それにしても、 天童荒太が描く家族は 本当に脆い。各自が抱える 心の闇を、独白の形で読者に 伝えながら、次の破局を 予告している…ドラマでは 遠藤憲一が熱演した馬見原の 一家惨殺の疑問…映像から 入ると味わえない、小説ゆえの 余韻だった。 2014/09/02
抹茶モナカ
115
思春期をこじらせたように世界の紛争地域に比べ、平和な日本の在り方について書き連ねるシーンが多くて、読んでいて恥ずかしくなる部分もあった。世界の紛争地域の現況を無視して飽食でいる日本の社会病理。少し稚拙に感じつつ、読んでしまったから不思議。最後に1部で起こった事件が連続殺人だという暗示。ちょっとペシミスティック過ぎて、感傷的にすら感じて、読み手を照れさせる第2部。2014/06/26
修一郎
99
群像劇は続きます。氷崎家族、馬見原家族、巣藤俊介、芳沢家族、冬島家族と登場人物が揃いました。白蟻の大野さんも…それぞれ重い問題を抱え、向き合いもがきながらやって行こうとしています。違和感はあります。苦しいと感じるのは主観的なんだから「世界には自分より辛い思いをしている子がたくさんいるのだから自分はましだね、頑張ろう」的な考えはないと思います。この巻もミステリー調で終了。天童荒太さんが描きたいのは家族の在り方なのでしょうが、ミステリーの形態をきちんと踏襲しています。最後にドキドキッとさせておいて、第3部へ。2014/08/13
かみぶくろ
91
第二部。登場人物の家族を巡る背景が描かれることにより、立体的に物語が立ち上がってくる。登場人物のいずれに対しても、共感も反発もありえるような性格づけがなされており、また、軸となる家族の崩壊というテーマとの混じわり方も絶妙で、非常に丁寧かつ誠実な作品作りだと感じる。タイトルの如く、読者も作者も登場人物も、暗く深い海の上で遭難しているような、不安と揺らぎに覆われた物語である。2020/04/19
Tsuyoshi
75
平行して描かれるそれぞれの日常。過去における暗い闇にも触れられている事もあり前巻にも増して重く不穏なものになっていた。さらにラストにおいて第2の「家族狩り」が行われようとする。登場人物、事件双方とめにどう結び付いていくのか気になります。2018/03/14