出版社内容情報
クリスマス未明に転落死したひとりの中学生。彼の死は、自殺か、殺人か――。作家生活25年の集大成、現代ミステリーの最高峰。
もう一度、事件を調べてください。柏木君を突き落としたのは――。告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。そして、同級生がまた一人、命を落とす。拡大する事件を前に、術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、級友の死の真相を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。
内容説明
もう一度、事件を調べてください。柏木君を突き落としたのは―。告発状を報じたHBSの報道番組は、厄災の箱を開いた。止まぬ疑心暗鬼。連鎖する悪意。そして、同級生がまた一人、命を落とす。拡大する事件を前に、為す術なく屈していく大人達に対し、捜査一課の刑事を父に持つ藤野涼子は、真実を知るため、ある決断を下す。それは「学校内裁判」という伝説の始まりだった。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
490
(承前)報道の正義とは何か。臭い物には蓋の事なかれ主義を暴くのは正しくても、そこに悪意や偽善や思惑が加われば別の腐臭が漂ってくる。同級生の自殺と思われた事件が正義の名を振りかざした報道の暴走で連鎖反応的に新たな死者を生み、藤野涼子は周囲の大人が自分たちの模範たり得ないと悟る。同級生や関係者も生きづらさを抱え押しつぶされそうになりながら、必死に生きるすべを探る。皆が孤独でないとわかったとき、真実の追求こそ自分たちを救う手段だと気付く。なかったことにするのではなく、あったことを正面から受け止めねばと。(続く)2022/05/06
yoshida
415
HBSの茂木記者の歪んだ正義感、功名心からの報道番組をきっかけに災厄が巻き起こる。思い詰める野田健一。三宅樹理の底知れぬ悪意。退職する森内。浅井松子の謎の死。大出家の火災と祖母の死。立ち上がる凉子。様々な事件が起こる。宮部みゆき氏は人間の感情を質感を感じさせる程に巧みに描く。中学生にすり寄る茂木記者の嫌らしさ、歪んだ正義感。三宅樹理と凉子が保健室で会うシーンの、樹理の悪意。グロテスクなまでの悪意が漂うが、向坂行夫の野田健一への純粋な友情、しっかりした藤野家に救いを感じる。3巻で凉子の決意を読む。2015/04/20
まりも
412
柏木卓也の死の真相を巡る物語の2冊目。告発状をHBSが報道番組で報じた事で、悪意の連鎖が始まる話。これは本当に凄い。たった一人の中学生の死が大きな波紋を呼び、更なる悲劇の連鎖へと繋がっていく様は圧巻であり、恐怖すら感じました。連鎖する悪意にただ翻弄されるしかない中学生、中途半端な力しか無い為に彼らを救う事のできない学校、自分の望む事しか報道できないマスメディア、この作品は社会に存在する暗闇を見事な筆力で綺麗に描いてくれるので飽きさせませんね。ここからどう物語を動かすのか、非常に楽しみです。2016/03/16
ソルティ
294
つい1日で一気読み。そのぐらい引き込まれておもしろかった。不幸な事件や事故ばかり続く城東第三中。全部最初の事件に関係してるのか、それともただの偶然なのかあちこち歪んでて真実が見えない。樹里が怖い。なぜ松子のことがあった時笑う?何考えてるかわからん。垣内美奈絵も被害妄想とモリリンに対する逆恨みが酷すぎて気持ち悪くて恐ろしい。この勢いで続きへ!「「人は嘘をつく。とことん嘘をついて、真実を語らないものだ。罪ある者ならなおさらだ。君たちはそれを知らない。僕は知っている。数多くの事例を見てきたから」」2019/03/17
山目
229
涼子さんかっこいい。善意と悪意が入り混じり、人々の世界への幻想が事態を泥沼へ導く。救えるのは、事実の解明のみか?いずれにせよ、前を向いて戦うしかない。涼子さんの今後の戦いに期待します。2014/12/31