内容説明
加賀様は悪霊だ。丸海に災厄を運んでくる。妻子と側近を惨殺した咎で涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿の祟りを領民は恐れていた。井上家を出たほうは、引手見習いの宇佐と姉妹のように暮らしていた。やがて、涸滝に下女として入ったほうは、頑なに心を閉ざす加賀殿といつしか気持ちを通わせていく。水面下では、藩の存亡を賭した秘策が粛々と進んでいた。著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。
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感想・レビュー
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yoshida
259
最後の加賀様から、ほうに宛てられた「宝(ほう)」の一文にやられました。幕府と丸海藩の加賀殿を巡るやり取り、更には藩主の座を狙う浅木家の暗躍。様々な思惑に翻弄され、果てには理不尽に命を落とす市井の人々や下士達。その行き場のない怒りは、丸海藩に混乱をもたらす。町が火事で焼け傷つく人々。そんななか、不器用だが真っ直ぐに生きる宇佐とほう。ほうは加賀様の屋敷に下女として働き、いつしか心を通わせる。登場人物それぞれに事情がある。しかし、それにどんな心持ちで向かうか。それで人は鬼にもなれば仏にもなるのだろう。名作です。2015/06/09
Aya Murakami
170
令和元年新潮文庫紅白本合戦 加賀様とほうとのやりとりが素敵な下巻。ほうが危険な場所に連れ去られる…!と危惧した上巻の流れを覆すストーリーでした。ほうはもう阿呆のほうではなく宝のほうであり方向のほうになったのですね。加賀様の過去も悲しい話でした。悲しみの心を持つことができる人間性だからこそ怨霊となれるのかも?天満宮とか行ったら怨霊祭っている神社なのにほがらかおじいさんのような気配を感じる自分です。2020/03/28
射手座の天使あきちゃん
141
何も知らず、大きな時の流れに巻き込まれて死ぬのも悲しいが、多くのことを知ることが必ずしも幸せにつながらない! 人生って難しい、価値観も人それぞれ 色々なことを考えさせられる、チョット渋い作品でした。 (^-^;2009/12/22
よむよむ
115
<Bオフ再読> 相手を思いやりながらどうすることもできない歯がゆさ。己の置かれた立場としがらみに苦悶するそれぞれの想い。そして加賀様と“ほう”のかけがいのない穏やかな日々は・・・ 心に深く深く染み入る感動にまたも涙、涙でした。『あの子は御仏に会うた。人の身の内におわす御仏に』2012/08/18
ゲンショウ
110
人の在り方。知恵の在り方。幸せの在り方。本来人間も、生まれ、活き、子を成し、そして逝く。他の動物と変わらない生き方、逝き方が出来る筈。又、客観的に観ればそんな生き方をしている筈なのです…。しかし、人はそこに何かの意味を見いだしたい、或いは意義を感じたいと考えてしまう。特に男に顕著なこの感傷が、無い筈の不幸せ、必要の無い不仕合わせを招いているやに感じました。そんな世の中で生きるには覚悟が必要なのでしょう。この物語に登場する女性の覚悟の深さには畏敬の念を覚えます。2012/02/29