内容説明
盆市で大工が拾った迷子の男の子。迷子札を頼りに家を訪ねると、父親は火事ですでに亡く、そこにいた子は母と共に行方知れずだが、迷子の子とは違うという…(「まひごのしるべ」)。不器量で大女のお信が、評判の美男子に見そめられた。その理由とは、あら恐ろしや…(「器量のぞみ」)。下町の人情と怪異を四季折々にたどる12編。切なく、心暖まる、ミヤベ・ワールドの新境地!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
294
江戸界隈の下町の出来事集。悲しい話とやや楽しい話と色とりどり。怪しげな話もある。幻色といううたい文句の意味通り。通勤電車で読むのによさそう。悲しい話を読むと、一旦本を閉じて、一駅ぼっとしたりする。次の話は悲しい話ではないかもしれないと気を取り直して読む。軟弱な読者。「器量のぞみ」はのぞみが叶った例だろう。他は朝読むとめげる。夕方読む方がよいかも。2013/05/20
yoshida
263
宮部みゆきさんの時代物の短編集。季節の移ろいとともに、12編から構成。市井の人々の人情と哀切、そして怪異が散りばめられている。安定の宮部作品。どの短編も読ませます。中でも、子が親を想い、親が子を想う作品が心に残りました。「まひごのしらべ」での夫と子を亡くした女の哀しさ。「神無月」での子の病の為に、年に一度、押し込みをする男の哀しさ。「紙吹雪」で亡き母と兄の無念を晴らす為に、相手の高利貸しへ奉公し、借金の証文をを切り裂き紙吹雪のように撒く女中の情景の晴れやかさ。彼女の罪が情景を一層際立たせる。切ない名作。2017/04/01
ehirano1
244
「侘助の花」について。趣がありながらなんともやり切れない切ない話でした。3~4月の花ということで、この季節と言えば「桜」が王道なのですが、この花を見かけた時はこの話を思い出すかもしれない、いや思い出してみたいと思いました。2023/09/04
夢追人009
216
お江戸の町で幸せ不幸せな人生を日々必死に生きている人々の物語を奇譚風に綴った宮部みゆきさんの絶品時代短編集。『鬼子母火』安心して成仏してね、おっかさん。『紅の玉』最悪の魔が差したね。『春花秋燈』行灯の怪異譚。『器量のぞみ』素晴らしい安堵の結末。『庄助の夜着』庄助が今幸せだといいね。『まひごのしるべ』辛いけど最善の結末。『だるま猫』逃げて正解。『小袖の手』真っ白な腕。『首吊り御本尊』忍耐の大切さを教える神様。『神無月』実は鋭い居酒屋の親父。『侘助の花』気の毒な女。『紙吹雪』ぎんさん、あの世で家族とお幸せに。2019/07/13
mura_海竜
212
宮部さんの時代小説、江戸時代の庶民の暮らし、今も残る名所・旧跡が読めるのが好み。今年は読みたい。12話の短編。江戸の時期、ものが少ない、人が浮き立つ時代。怪談未満の、怖すぎず温かい気持ちになる物語もあり、真相が未解決のまま終わる編もある。『だるま猫』『首吊り御本尊』『神無月』が良かった。2017/01/22