内容説明
沖縄には、神様が静かに降りてくる場所がある―。心ここにあらずの母。不慮の事故で逝った忘れえぬ人。離婚の傷がいえない私。野生の少女に翻弄される僕。沖縄のきらめく光と波音が、心に刻まれたつらい思い出を、やさしく削りとっていく…。なんてことないよ。どうにかなるさ。人が、言葉が、光景が、声ならぬ声をかけてくる。なにかに感謝したくなる滋味深い四つの物語の贈り物。
著者等紹介
よしもとばなな[ヨシモトバナナ]
1964(昭和39)年、東京生れ。日本大学芸術学部文芸学科卒。’87年「キッチン」で「海燕」新人文学賞、’88年単行本『キッチン』で泉鏡花文学賞、’89(平成元)年『TUGUMI』で山本周五郎賞をそれぞれ受賞。海外での評価も高く、イタリアのスカンノ賞、フェンディッシメ文学賞を受賞。『アムリタ(上・下)』(紫式部文学賞)『不倫と南米』(ドゥマゴ文学賞)など著書多数。2002年8月の『王国その1 アンドロメダ・ハイツ』刊行より「吉本ばなな」から「よしもとばなな」に改名した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
173
“沖縄という場所が私の人生に入ってきたことは、とても大きなことだった”と語る吉本ばななさん。”挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る”といった意味合いの沖縄の方言を書名に冠したこの作品には吉本さんの『沖縄』への深い思いが詰まっているからこそ万人が納得できる物語の姿があるのだと思います。『沖縄』のあんなこと、こんなことが鮮やかに描き出されていくこの作品。吉本さんらしく美しい言葉の数々が紡がれるこの作品。『沖縄』という地の魅力を再認識させてくれる、吉本さんの想いをとても強く感じた作品でした。2024/02/23
おしゃべりメガネ
173
ばななさんが沖縄を舞台に書きたいように書いた短編集って感じです。ここ最近読んだばななさんの作品の中では、若干印象薄かなと。いつもどおり洗練された文章は素晴らしく、何気ないひとコマや風景にしっかりと癒されるのですが、いかんせん沖縄の舞台、風景に馴染みがないからか、残念ながらそこの情景描写のありがたみを十分に感じることができませんでした。しかし、ばななさんの描く人物たちは自分に対し、本当に素直に100パーセント、自然体で生きていますね。こんな飾らないナチュラルな雰囲気がばななさん作品を読み続ける理由ですね。2015/11/14
kaizen@名古屋de朝活読書会
166
短編4話。沖縄。あとがきによれば観光者としての立場。島時間。暖かい国固有の暖かさを感じる。まったり、のったり、さっぱり、すっぱり、なんくるない。たんたんとした語りの中で、沖縄らしさを醸し出す。表題作は沖縄での話が中心。あとがきに、2つの死との関係を綴る。文庫版あとがきが別にある。解説はない。2013/06/14
ヴェネツィア
138
表題の中編と短篇を3つ収録。いずれも沖縄を舞台に書かれたもの。タイトルの「なんくるない」(何とかなる)が奇しくも語っているように、物語の構想はかなり行き当たりばったりである。それが良くもあるし、またこの小説の欠点ともなっている。「ゆるやかさ」は、そもそもがこの作品のテーマでもあり、プロットの主軸にあるのは主人公桃子の癒しと快復の物語なのであるから。一方で虎靖との出会いはともかく、そこからは流されるように物語は一気に進行してしまうし、エンディングにも違和感が否めない。読者は、初期のばなな作品に帰るだろう。2013/02/11
いこ
108
「なんくるない」とは、沖縄の言葉で「どうにかなるさ」の意味。沖縄が舞台の4つの物語集。実は、4編中3編は、あまり好みと合わない。しかし、しかしなのだ。表題作「なんくるない」だけは、もう異様に好き。何回読み返したかわからない程。あ、ちなみに私がこの本を読んでいる時は、大体落ち込んでいる時なので、声をおかけにならないでください。絡まれるかもしれません。話が逸れたが、表題作に関しては、一行たりとも嫌いなところがない。というより全文章に「わかる、わかるよ、その気持ち」と言ってしまう。沖縄の風や光を感じられる一冊。2023/02/04