出版社内容情報
50年の時を越え、置き忘れた恋の最終章が始まる。携帯メールがつなぐ老年世代の瑞々しい恋愛を描き各紙誌絶賛の傑作小説。
妻を看取って十余年、人生の行き止まりを意識し始めた嶺村浩平は、古いトランクからかつての大学のゼミ仲間・瀬戸重子の若々しい写真を見つける。そして甦る、重子と一度きりの接吻を交わした遠い思い出。思わぬ縁で再会した重子の勧めで、70代にさしかかり初めて携帯電話を手にした浩平は、秘めた想いをメイルに込めるが……。恋に揺れる、老いの日の戸惑いと華やぎを描く傑作小説。
内容説明
妻を看取って十余年、人生の行き止まりを意識し始めた嶺村浩平は、古いトランクからかつての大学のゼミ仲間・瀬戸重子の若々しい写真を見つける。そして甦る、重子と一度きりの接吻を交わした遠い思い出。思わぬ縁で再会した重子の勧めで、七十代にして初めて携帯電話を持った浩平は、秘めた想いをメールに込めるが…。恋に揺れる、老いの日々の戸惑いと華やぎを描く傑作小説。
著者等紹介
黒井千次[クロイセンジ]
1932(昭和7)年東京生れ。’55年東京大学経済学部卒。70年『時間』で芸術選奨新人賞を受賞。’84年『群棲』で谷崎潤一郎賞、’95(平成7)年に『カーテンコール』で読売文学賞、2001年に『羽根と翼』で毎日芸術賞、’06年に『一日 夢の柵』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
43
☆☆☆☆ 老いても瑞々しい感情は持ち合わせていたい。慣れない携帯でひらがなのメールを打つ浩平。そのたどたどしいメールに、若いときとは違った、純粋なときめきが表れていて共感した。解説にもあったが、鉢から庭へ植え替えた葡萄の木が、この作品に奥行きを与えている。2021/07/06
to boy
17
老いらくの恋の話。先が見えている歳になると恋をするにも勇気がいっていろいろと考えすぎてしまうんですね。若いときの一途な気持ちと違って見ている方はもどかしくもあり、また 哀しい話でした。「老人ホームに行くことにしました」と告げられた時の主人公の気持ちがやるせないです。2015/04/22
ぶんぶん
11
しみじみと心に沁みる…もう若くは無い、七十代想い出は学生時代、ふと触れ合った微かな記憶。 ふとした瞬間、甦るその一時。 初めて手にした携帯電話、秘めた想いをメールに込めるが…恋に揺れる、老いの日々の戸惑いと華やぎを見事に描く。 人生の行き止まりで余生を見つめる時、ただの別れが辛い。2015/07/16
雨巫女。@新潮部
11
《私‐図書館》初老の二人の恋のピュアさに、じーんとしてしまいました。あんなときめきしたいなあ。2012/12/24
ラスカル
10
妻を亡くして一人暮らしの70代の男性。学生時代の同級生重子と再会して何度か会ったり、初めて持った携帯でメールしたりの付き合いが始まる。が、やがて重子が老人ホームに入ることになり別れがくる。学生時代のたった一度の過ちめいたキス同様、淡いままで終わってしまった。もどかしい。2018/03/26