内容説明
日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて―。ある町の春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。忘れかけていた感情が鮮やかに蘇る。夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、桜の花の下、若い男女はそっと腕を組み…。昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年、『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年、『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年、『ビタミンF』で直木賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々と発表している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
316
正直あまり期待せずに手に取った作品だけれど。タイトルの秀逸さ(あとがきを読むとよくわかる)、週刊誌掲載なのに、せかされずにきちんと書いてらっしゃるその姿勢。季節の移り変わりとともに、どこにでもありそうな普通の家族の十人十色が描かれる12の短編集。ラストの『卒業ホームラン』、うちの息子がリトルリーグでオールスター選抜漏れたときのことを思い出して、なんだかしんみりしてしまった。2017/12/25
じいじ
110
「サンデー毎日」に連載のうちから12篇を収載。重松さんのホッコリ暖かい家族小説が読みたくて、16冊目は本作を選んだ。期待どおりの読み心地で大満足。【カーネーション】は、妻に先立たれた子供2人のシングル・ファーザーの再婚話。何年か過ぎ、新しいお母さん候補の出現。子供たちとの初対面が「母の日」で急遽取りやめに。そんな父親の心の裡を見抜いてる子供たち…。【サマーキャンプ…】【すし、食いねぇ】も微笑ましい家族たちに癒されます。とにかく、重松さんの小説は、短篇でも起承転結がしっかり考えて作られているのが好いです。2021/02/06
シブ吉
93
私にとって短編集というものは、「幕の内弁当」みたいなもの。しかも、重松さんの短編集は、「好きなものだけが入った幕の内弁当」で、毛色の違った作品が集まって一気に読んでしまいました。12編の人生模様。登場人物の中に自分と似ている点を探しながら、作品世界に入り込んでしまいました。大人の目線、子供の目線、視点はそれぞれあるけれど、後になって後悔するのは大人も子供も同じこと。これからも、後悔しながら生活していくのだろうが、そんな人生も受け入れながら、「焦らず少しずつ前に進んでいこうよ」と思わせてくれた一冊です。2013/06/19
レアル
83
短編集。老若男女様々な視点から伺える物語でしっくりきたり、ジーンときたり、じんわりと心に沁みわたるそんな作品が多かった。日々の些細な出来事の中に小さいけれど、人其々の幸せを描き、心温まる素敵な作品で心に響く。こんな短編なら何編でも読んでいたいし良い作品だった。どれも良かったが、太宰治関連の「桜桃忌の恋人」が特にお気に入り。これを読んで太宰治を久しぶりに読みたくなった。2015/10/12
ぶんこ
75
月並みな言い方ですが、つくづく「人それぞれ、みんな違う。人との相性は理屈抜き」と感じた短編集でした。「チマ男とガサ子」は、男女を逆にすると私だ。いかにも合わなさそうな2人でも、お互いにとっては良い相性なのでしょう。「すし、食いねェ」と「卒業ホームラン」がしみじみとよかったです。2020/06/12