内容説明
空虚な日常、目を凝らせど見えぬ未来。五人の男は競馬場へと吹き寄せられた。未曾有の犯罪の前奏曲が響く―。その夜、合田警部補は日之出ビール社長・城山の誘拐を知る。彼の一報により、警視庁という名の冷たい機械が動き始めた。事件に昏い興奮を覚えた新聞記者たち。巨大企業は闇に浸食されているのだ。ジャンルを超え屹立する、唯一無二の長篇小説。毎日出版文化賞受賞作。
著者等紹介
高村薫[タカムラカオル]
1953(昭和28)年、大阪市生れ。’90(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。’93年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。’98年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。’10年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
477
1984~85年にかけてのグリコ・森永事件に触発されて書かれたものだろう。上・中・下を合わせるとゆうに1500ページを超える大作ゆえに、この上巻では事件までが実にゆったりとしたペースで描かれる。発端を1947年の怪文書にまで遡って求めたのは高村のフィクションだろうが、そうした工夫は小説世界に広がりと深みとを与えている。また、いつものことながら取材力は微に入り際にわたっている。業界最大手の日之出ビールの社長ともなれば、こんな感じなのだろうとの説得力もだが、何より犯人像の造形に感心させられる。続巻が楽しみだ。2018/05/19
遥かなる想い
174
1999年このミス国内第一位。 『グリコ・森永事件』を題材にしたミステリで 注目しており、文庫化を機会に3冊一気に読破。やや描きこみが弱く感じるのは、著者の事件への配慮か。(1999年国内このミス1位)2010/04/11
小梅
151
色々な経験と立場の男達が動き出す。映像で見えるような気がします。西武新宿線の田無駅から、ひばりが丘団地行きのバスに乗る…知ってる場所が出てきて「お〜!」ってなりました。 中巻にいきます。2016/06/14
KAZOO
150
出版された当時単行本2冊をすぐ読んだのですがすっかり詳細は忘れていました。競馬場や事件の概要は覚えているのですが、このビール会社のそもそもの発端や役員などのやり取りなどはすっかり忘れていました。新しい小説を読む感じでした。昭和初期から中期にかけての企業をめぐる状況などがよくわかります。それにしても作者はよく調べ上げて書いていると感じています。上巻ではまだあまり合田警部補は出番が少ないようです。2018/02/08
レアル
148
合田シリーズ3作目。WOWOWドラマを観ていたので、映像も手伝い話も入り易かった。また高村氏の文章にも慣れてきたせいもあり楽しめた。日之出や警察そしてマスコミの描写のリアリティさは凄いし、リアリティさや描写の緻密さに関しては高村氏は本当に上手い!物語は始まったばかり。原作でしか楽しめない物語を堪能しながら中巻へ。2013/05/09