内容説明
警視庁捜査二課・島崎洋平は震えていた。自分と長男を脅していた銀行員の富岡を殺したのは、次男の英次ではないか、という疑惑を抱いたからだ。ダンスに熱中し、家族と折り合いの悪い息子ではあったが、富岡と接触していたのは事実だ。捜査本部で共にこの事件を追っていた樋口顕は、やがて島崎の覗く深淵に気付く。捜査官と家庭人の狭間で苦悩する男たちを描いた、本格警察小説。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955(昭和30)年北海道生れ。上智大学在学中の’78年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、執筆に専念する。2006(平成18)年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を受賞。さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけるが、警察小説の書き手としての評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
138
シリーズ3作目。これもまた、作者のメッセージ性の強い作品でした。少なくとも犯人探しのドラマではない。シリーズここまで全体に流れる家族のあり方、今回は特に父と息子の関係に焦点が当てられていた。タイトルは、今野さん自身がのめり込んだ、というダンスから。私だってダンスは嫌いではないが、それを読まされるのは少々苦痛でした。シリーズ続いたけど、間を空けたほうがよかったかな。主人公樋口の地味なキャラも、好き嫌い別れるところです。シリーズ中では最初に読んだ『朱夏』が、個人的なベスト。2015/03/25
再び読書
118
強行犯係・樋口顕シリーズも三作目で面白くなってきました。最初にドラマヲを見て英次が犯人でないのは知っていましたが、幸い犯人を忘れていたので、最後まで面白く読めました。親子それも親父と息子の葛藤は、本当に一筋縄ではいかない。ダンスにかける英次が眩しく、最後はなぜかうるっときました。特に「隠蔽捜査」シリーズの竜崎と比べると地味ですが、次の作品も読みたくなりました。最後の裁きが印象的でした。 2016/07/14
ehirano1
103
樋口っちゃんは100ページしないと登場しないし、氏家に至っては300ページあたりでやっとご登場で、これはいつもと何か違うと思いながら読み進めました。ダンスを題材というまさかの題材を基に、親子や家族について著者のありったけの思いが詰め込まれた内容で、清々しい読書となりました。2022/02/12
Hitoshi Mita
95
樋口シリーズ3作目。警官も人の親なんだと痛感させられた。まぁ警官としてはあってはならないことなのかもしれないが、人情としては同情させられるところもある。男親と息子の関係。しかも長男が優秀だったりすると次男としてはかなり苦悩することだろう。その苦悩に親が向き合っていられるかと言うところなんだろうが、面倒くさい事からは目を背けたくなるのも人間。、なかなか難しい問題だと思う。島崎は最初で躓いてしまってそこから逃げたことのツケがこんな形で現れてきたんだと思う。ダンスシーンの描写がちょっとクドイけど面白かった。2014/11/19
s-kozy
86
500ページ超と長いが、その長さが負担とならない面白い作品だった。「リオ」「朱夏」に続く樋口顕シリーズの三作目。シリーズ中では最もよかった。銀行員殺害事件の捜査に親子間、兄弟間の葛藤を絡ませながら、ストーリーが進んでいく。要所要所に配置されているダンスの場面が効果的でまさにビートを刻んでいるようで全体がテンポよく読める。終わりの方に出てくる氏家による父親を評した一言が切なく、しかし、真実味も強く、考えさせられた。「どんなに憎い父親でも、死なれたら、楽しかったことを思い出しちまう」かぁ。2014/05/24