内容説明
竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955(昭和30)年北海道生れ。上智大学在学中の’78年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、執筆に専念する。2006(平成18)年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を受賞。さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけるが、警察小説の書き手としての評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
870
先に2を読んでここに戻ったので、前半の竜崎には戸惑いを覚えるほどだった。東大至上主義、警察庁のキャリア官僚としての矜持はともかく、鼻につくほどのエリート意識。それまでには「青春時代を犠牲にし」、人一倍の努力を傾けてきたのだから「老後くらいはいい思いをしたい」などと、これまた何という俗物性。ところが、連続殺人事件と息子の薬物吸引とおう2つの出来事を通して竜崎は変わってゆく。この2つは「公」(殺人事件)と「私」(息子の事件)において、まさしく竜崎にとってのイニシエイションだったのである。2022/03/28
鉄之助
798
今野敏の出世作で2006年の吉川英治・文学新人賞を獲得した”警察小説”。期待通り、息もつかせず物語が進行する傑作だった。主人公・竜崎と小学校からのライバル・伊丹の性格の対比が面白かった。頭はずば抜けてキレるが”変なヤツ”竜崎、に反発しながら、読み進めているうちに共感する自分を発見。それにしても、現代に通じる日本社会の「隠蔽体質」を鋭く突いていた。2025/01/26
サム・ミイラ
645
なぜか無性にあの唐変木に会いたくなり再読。それはきっと迷ったり悩んだりした時この男の事が思い浮かぶからだろう。それにしても。一作目の竜崎伸也は実に嫌な奴。それがラストでは印象が百八十度変わる。こんな小説は滅多にない。この男には私心が全くない。エリート意識は公僕としての義務の下に持つべきとの信念。キャリアは働かねばならない。この言葉に感動する。そしてただひとり組織の誤った方向を正そうと奮闘する姿にさらに息子の不祥事への身の処し方に泣けるほど共感する。やはりこんな小説は滅多にない。2016/07/02
抹茶モナカ
523
官僚の姿を描く警察小説。主人公が『変人』とされる程の正論に基づき行動する官僚で、最初はとっつきにくいキャラクターなのだが、気付けば魅了されていた。僕は中学生時代にいじめにあった事があり、その自分をいじめた相手を見返すために社会的成功を目標にした事があった。まあ、そんな事はさておき、会話シーン過多に見えて、稚拙でもない作品。2013/12/20
zero1
488
サラリーマンにとってもこの作品は羅針盤の役割を果たしているはず。原則を曲げない竜崎の選択に学ぶべき人は多い。でも父親が彼なのは嫌だ!人気シリーズの第一巻。警察庁のキャリア課長、竜崎が主人公。横山秀夫とは違った視点の警察小説で興味深く読める。竜崎が知らなかった殺人事件は、次の事件とつながっていた。事件を描きながら、家族小説でもある。本書のMVPは妻の冴子。夫を「唐変木」「無能」というセリフには笑った。敢闘賞は谷岡。こんな官僚ばかりなら国民も安心できるのだが。再読だが、シリーズを順次紹介したい。 2018/11/04