内容説明
「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955(昭和30)年北海道生れ。上智大学在学中の’78年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、執筆に専念する。2006(平成18)年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を受賞。さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけるが、警察小説の書き手としての評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
192
警察小説というよりも、『家庭にける教育(≒子育て)』が軽視されていることについて、警官と少女(=リオ)を用いて警鐘を鳴らしている話だと感じました。子供は思った以上に大人を見ている、いやいや「観ている」のだなとつくづく実感しました。2022/01/08
zero1
191
火曜日の殺人をどう追う?地味な捜査官の心理こそ本書の核。マンションで中年男が殴打され死亡。若い女性が目撃されていた。樋口は予備班にとして本部に参加。さらに第二の殺人が。心理学の氏家や高圧的な古典刑事、植村との対比(北風と太陽)も見どころ。「隠蔽捜査」で知られる今野。奥さんの勘が鋭いところなど似ている。尋問の場面での人間観察は「継続捜査ゼミ」とも重なる。多くのページを用いて世代論を述べているが、賛否が割れそう。犯人についても説得力が欠けているか。樋口シリーズは「朱夏」に続くが、この後読むかどうか検討したい。2019/10/13
ミカママ
154
先に『朱夏』を読んでしまっていました。結論から言うと、筆致を始め、プロットなども硬い印象。作中、全共闘世代への反発が激しいけれども、作者の個人的な憤りが込められているのかな。『朱夏』もメッセージ性高かったし。樺美智子さんや『二十歳の原点』で、かろうじてその世代を彼らの手記で読んだ私には興味深い内容だったけど、今の若い世代にはなんのこっちゃ?でしょうね。そういう意味ではちょっと古さを感じてしまう。個人的に、刑事である40代の主人公が容疑者の17歳美少女に恋心を抱いたのには、不快感を覚えました。2015/03/24
修一郎
131
内藤剛志さん主演のドラマシリーズを観るのでまずこれから。今野さんとしては樋口刑事を御自分と同じ歳に設定して,樋口刑事をしてポスト全共闘世代を語らせたいということだ。今野さん御自身が全共闘世代の後始末をさせられているという自覚があるという。樋口さん,隠蔽捜査の竜崎警視とかの強烈キャラと違って,気弱で人の眼が気になる組織人だ。家庭も組織も大切にして荒立てないことを第一に捜査も着実。でも若い娘に惹かれるという展開はいらないと思う。こんな地道な警察の捜査を味わう構成もまた良しです。次,朱夏へ。 2020/05/05
再び読書
130
「隠蔽捜査」シリーズの竜崎と正反対とも言えるこのシリーズの主人公樋口、周りの目を気にするところが対比されてイライラしてしまう。本当に同じ人が書いたのかと思うくらい主人公のキャラクターが違い過ぎる。ただし、そこは鉄板の今野氏、最後まで面白く読み進めました。このシリーズも楽しみに読んでいきます。今回は美人なのに、であるがゆえに2015/09/23