新潮文庫
思春期をめぐる冒険―心理療法と村上春樹の世界

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  • サイズ 文庫判/ページ数 314p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101319513
  • NDC分類 146.8
  • Cコード C0111

内容説明

思春期、それは性や死の力に強くとらわれ、こころが解体と再生を体験する時期。娘の家庭内暴力に苦しむ母親の心理療法の実例と、「書くことは自己治療的な行為」と語る村上春樹の小説世界の両面から、知られざる「思春期」のありように迫る。

目次

第1章 物語の力(物語の呪縛;新たな物語のプロローグ)
第2章 思春期という異界(異界の視点;思春期同窓会)
第3章 思春期体験と死(死の側面とつながる;生の中にある死)
第4章 現実の多層性(「見える身体」と「見えない身体」;羊男の世界;「入り口の石」;イメージの力;「向こう側」から来る性と暴力;一夜の出来事―『アフターダーク』から)
第5章 本当の物語を生きる(物語の共有;全体性を取り戻す;物語の行方)

著者等紹介

岩宮恵子[イワミヤケイコ]
聖心女子大学文学部卒業。臨床心理士。鳥取大学医学部精神科での臨床を経て、臨床心理相談室を個人開業。2001年より島根大学教育学部助教授。2005年より同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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Toto

11
たまにネタバレがあるのでまだ村上春樹作品を読み終わっていない人は注意。 思春期の子どもをもつ親御さんとか、心が辛い人、治療者、村上春樹を理解し直したい人にはかなりオススメな内容。読んでいるうちに癒される気がする。 「たましい」と「あちら側の世界」いう概念がイマイチぴんとこない。そもそも理解を越えたものなのだろうが。 「あちら側の世界」と「こちら側の世界」はバラバラに存在しているのではなく一本の線のようなもの。それを繋いでいるのが「たましい」。 『海辺のカフカ』の入り口の石というのはまさにこの存在なのか2013/08/03

羊の国のひつじ

10
何が言いたいのか全くわからないが、なぜだか引き寄せられる村上春樹の世界。今まで彼独特の文体と世界観だけで満足していたが、本書を読んで解釈によって本当に村上春樹が伝えたかったことが垣間見えた気がする。これらの解釈が正しいにしろ、間違っているにしろ、この本が村上春樹の世界をさらに面白くすることは間違いないんじゃないかな。いろんな解釈があってこそ、物語は物語だけではない面白みが増すと思う。少し飛躍しすぎなところもあるけどね。2015/09/20

なっく

7
村上春樹の小説を心の病の観点から観察したなんとも不思議な視点。ちょっと解説しすぎというかこじつけっぽいところもあるけれど、奇妙に納得してしまうところもある。確かに本人も言っているように、彼の作品はメッセージがあるから書くのではなく、自分のメッセージを見つけるために書く、というような試行錯誤というか実験的なところが魅力だ。そういう異次元で非日常的な世界を読みたいから、人々は彼の作品を手に取るのだろう。私たちはかくも不完全な存在だね。2013/11/19

さく

6
『海辺のカフカ』を読んで、もう村上を読むのは止そうと思った気持ちはどこから来たのか、それが分かるかもと思って読んでみた。自分にとって、村上春樹を読み解くのに有効ではなかったが、心理療法を必要とする患者には「こちら側」と「あちら側」が実際にあるということは良く分かった。そこに共感の鍵があるのだろう。「こちら側」 で手一杯だったり、暗喩を読み解く力が足りないとこが『海辺のカフカ』が面白くなかった原因だったと思う。原因が分かったのでまた読む気が出てきた。(ナイスより) 2014/09/15

こばちん

4
臨床心理士による村上春樹作品の解説本。心理療法の事例は無くてもいいんじゃないかな。なかなか面白かったけど、ちょっとオタク過ぎて読んでてつらい面も…。2014/12/03

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