内容説明
絹子は娘・麻沙子の説得にも応じず、ドナウの終点、黒海まで行くと言い張る。絹子の若い愛人・長瀬の旅の目的に不安を感じた麻沙子とシギィは、二人に同行することにした。東西3000キロ、七ヶ国にまたがるドナウの流れに沿って二組の旅は続く。様々な人たちとの出逢い、そして別れ―。母と娘それぞれの、年齢を超えた愛と、国籍を超えた愛を、繊細な筆致で描き上げた人生のロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mariya926
115
17歳年下の青年を恋し自分自身を見つめ直し、浮気されたり煩わしく思われていたのに、最後にはいないとだめな存在へと成長した母親と、ドイツ人にはなれないと恋人と別れて帰国したけど母親のことで戻ってきて再会して、その後の様々な心の動きを見せる娘を見ているのが楽しかったです。ドナウの川沿いを旅行できるってものすごい贅沢ですね。借金がすごいのにお金をあげたり奢っている姿には、そんなことしてていいのかな?と現実的に考えてしまいましたが。この壮大な物語をどの様に決着をつけるか気になっていましたがそうなってしまうのですね2019/03/07
あつひめ
92
後半になってやっと動き出した…。それぞれが思うところをひとつにしてという感じ。ドナウは日本では考えられない川の流れ。母と娘が女同士として顔を付き合わせ…それぞれの女に振り回されるように男たちは動き回る。年上女と若い男の逃避行がいつの間にかサスペンスに…。人の人生の幕はあっけない。でも、そこに至るまでの生きざま。悔いなく生きることが巻く引きに大きく関わってくる。絹子は、女として母として短い時間で足りなかったものをすべて味わい尽くしたのかもしれない。私には長い長い旅だった。2013/09/04
i-miya
72
2013.12.15(12/15)(初読)宮本輝著。 12/03 (カバー) 父を捨て、出奔の母、絹子、「ドナウ河に沿い旅をする」手紙残す。 五年を過ごした西ドイツへ飛ぶ娘麻沙子、母が若い男と一緒であると知る。 再会のドイツ青年シギィと共に二人を追う、まさに再生の旅。 (地図) 1.西独。 ドアヌエンゲン。 タットリンゲン。 レーゲンスナルク。 ヴァルハラ神殿。 ヴェルト。 ヴィンドルフ。 パッサウ。 2.オーストリア。 合流、イン河。 ウィーン。 2013/12/15
財布にジャック
69
憂鬱な内容なので、なかなか読み進むのに時間がかかりましたが、ドナウに沿って二組のカップルと一緒に私も本の中で中欧7ヶ国の旅をやっと終えることが出来ました。年齢差や国籍の違いを乗り越えた愛がテーマでしたが、まさかこういうふうに旅が終わるとは思いませんでした。これってバッドエンドではないと思いたいです。その証拠に、途中までは登場人物達が好きになれませんでしたが、ラストには何故か温かい気持ちになれました。もうすぐ中欧へ行く予定ですが、ドナウ川を見たらきっとこの物語を思い出したいと思います。2013/05/29
chikara
62
本当に久しぶりの再読でした。泥の河・蛍川・道頓堀川の川三部作に続き、ドナウ川という大河沿いに旅を続ける人々の物語。たくさんの魅力的な登場人物の中で印象深いのはアムシュタイン夫人かな。たくさんの良い言葉達に感銘を受けました。イズムに対する考え方は唸ります。2017/06/01