新潮文庫
水平記〈下〉―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 452p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101304342
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0195

内容説明

泥沼化する日中戦争、大東亜戦争勃発。体制への迎合を拒んだ治一郎は、水平社を消滅させるという苦肉の策を選んだ。そして、終戦。“世界水平”を求める新たな闘いは、周恩来、ネルー・インド首相らとともに構想したアジア連帯ビジョンへと発展し、後の日本外交にも確かな指針を与えている。「生き抜け、その日のために」(磯本恒信への手紙)―差別撤廃を求めて闘いぬいた男の壮絶な姿。

目次

第9章 死するは本望
第10章 策謀者たち
第11章 戦時下を生きる
第12章 訣別
第13章 九州共和国
第14章 拝謁拒否
第15章 世界水平への旅
第16章 井戸を掘る
第17章 五禁の人

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てつ

42
なんとも凄い人だ。志を貫き戦前から戦後までを被差別民の解放活動を続けた松本治一郎の評伝及び政治史。発言や行動に関しては戦後吉本隆明などに批判されているが、それはあくまでも評論、頭の中での話。実際は葛藤に悩まされながらも、目的を果たすため最大限の努力をした巨人。感想は沢山あるのでいつかブログにでも書こうかと思う。政治に絶望した人に、こんな人もいたんだということでお勧めしたい。2020/10/15

きいち

22
松本や水平社のメンバーたちの、戦時下から戦後にかけての散々だけど真摯な苦闘っぷりに、思わず心が躍ってしまう。共産主義、皇国思想、翼賛会、そして占領軍やレッドパージとちっぽけな個人なんてあっという間に吹き飛ばされてしまいそうな暴風のなか、理念や体系に頼るのではなく、身近な現場を「少しでも良く!」という根っこをどっしりと張って。ブレを恐れず、妥協を拒まず。だからこそ翼賛会から選挙に出たのだろうし、敵だった者とも手を結べた。これこそ、本物のプラグマティズムなのじゃないか?今お手本にするべきモデルでは、と感じた。2013/12/13

モリータ

9
◆下巻は1936年の衆議院当選から議会での動き、戦時下の水平社・融和団体の交錯、そして戦後は社会党左派・参議院議員としての活躍と日中友好の取組みを描く。戦後の解放同盟の展開の記述はほぼなし。◆戦前含め党派争いを嫌い超然とした態度。一方で翼賛候補として当選し、戦争協力ととれる言辞もあった(が、そこには別の底意も)。レッドパージの先駆けのような不可解な公職追放は吉田茂が画策したという。◆諸点興味深く人柄の魅力も伝わる伝記だが、やはり実業家としての側面と、資金源たる松本組の実態の記述がないのは物足りなく感じた。2021/06/08

うたまる

5
松本治一郎が国会議員として、また水平社のトップとして活躍する下巻。治安維持法下での困難な舵取りや左右を問わない人脈、戦後のアジア外交など、そのバイタリティには舌を巻く。が、ちょっと待て。彼を聖人として描きすぎてはいないか。彼の求心力の源泉は明らかに資金力だ。全国組織の運営から浮浪者への炊き出し、支持者への小遣いまで、地方の一土建屋に都合できるレベルではない。恐らく彼は同和錬金術の先駆者だったのだろう。しかし、それが部落差別解消に役立ったなら、それ込みで評価すればいい。つまり右の角栄、左の治一郎ってことだ。2016/09/22

Ikuto Nagura

5
下巻は、国会議員松本治一郎と、戦争に翻弄される水平社を記録する。左右両陣営が水平社と松本を巡って繰り広げる綱引きは、まさに近現代の太平記。自陣営に部落解放運動を取り込もうとした共産主義者も軍国主義者も、「人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向って突進す」という水平運動に、それぞれの掲げる理想社会への道程を見たのであろう。そして、どちらの理論にも与しなかったことは、松本の思想や運動の独自性と普遍性を証明している。この思想の帰結が、エセ同和や高山が書いた『どん底』だとは思えない。憲法14条を声に出して読もう。2015/11/06

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/23408
  • ご注意事項