内容説明
千八百四十八年二月、大好評を博したショパン六年ぶりの演奏会の一週間後、フランス二月革命が勃発する。民衆の怒涛の奔流は、首相の解任、王の退位を実現し、共和国を生み出した。貴族達の惑乱と不安、活気づく民衆。ショパンは英国に移るが、過酷な演奏旅行を強いられ、体調は悪化する。一方ドラクロワは、ある画家の評伝の執筆にとりかかる。時代の巨大なうねりを描く第二部前編。
著者等紹介
平野啓一郎[ヒラノケイイチロウ]
1975(昭和50)年、愛知県生れ。京都大学法学部卒。’99(平成11)年、大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により芥川賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
299
圧巻はいきなり冒頭から現れる。プレイエル社のサロンでのショパンの演奏会の描写である。100ページにわたって展開されるそれは、ショパンのピアニズムの精髄を文章によって再現しようとの平野の挑戦であった。ショパンが「舟歌」の最後を楽譜通りにフォルテではなく、ピアニッシモで弾いたとのエピソードは、はたして史実通りであったのか、はたまた平野の小説的創作であったのか。また、この巻では、ショパンとドラクロワの二人が、ジャンルも芸術家としてのタイプも異にしながら、共に彼らの命を削って創作していたとの壮絶な記述が目を引く。2016/07/19
のぶ
63
第二部は冒頭から約100ページに及ぶショパンのコンサートの場面から始まる。活字からピアノの響きが聴こえてくるようなあでやかな文章。今までショパンを物語の前面に出さなかったのは、作者の計算だったのだろう。音楽に酔わされて先に進む。やがてドラクロワが中心の話に移り「民衆を導く自由の女神」他、絵画を通して語られる芸術論も深い。やがて社会が動き出し勃発するフランス革命。ショパンは弱る体で旅を続け演奏会を開く。最後近くで演奏されるソナタ「葬送」が先の予感を感じさせた。最終巻に入ります。2016/06/16
優希
48
二月革命が勃発したことで、天才は孤独へと結びつくのですね。時代は大きく動き始め、ショパンの運命も動き始めたと言えるでしょう。2022/12/14
崩紫サロメ
27
サンドと別れた後のショパン。冒頭からの演奏会のシーンが圧倒的。平野啓一郎はこういう魂の昂ぶりを描くのが上手いなあ、と改めて。二月革命という激動の時代の中で、ショパン、ドラクロワ、サンド、ソランジュら、それぞれの葛藤や憂愁が立体的に交錯する。個人的には、ショパンとミツキェヴィッチのポーランドに対する想いのズレなども面白かった。確か、本書が刊行された頃、ミツキェヴィッチの『パン・タデウシュ』が映画化されたな……などと懐かしく思いだした。2020/10/27
miho
23
【2021-160】【図】2021年の読書納めはこちら。第二部の下巻を残した半端な状態で年越しです…。満を持してショパンの演奏会の様子が冒頭から100ページに渡り描かれています。まるでその演奏会に参加しているかのような臨場感。その後、英国へ渡ったショパンの病状がどんどん悪化していき痛々しい。そして、第二部も登場人物の心理描写がすごい!ドラクロワの『天才』の考察や天才ゆえの苦悩が苦しいほどに伝わってきました。いよいよ最終巻へ。2021/12/30