出版社内容情報
谷川 俊太郎[タニカワ シュンタロウ]
著・文・その他
内容説明
詩人はいつも宇宙に恋をしている。作者にも予想がつかないしかたで生れてきた言葉が、光を放つ。「夜のミッキー・マウス」「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」そして「百三歳になったアトム」。ミッキー・マウスもドナルド・ダックもプルートーもアトムも、時空を超えて存在している。文庫版のための書下ろしの詩「闇の豊かさ」も収録。現代を代表する詩人の彩り豊かな30篇。
目次
夜のミッキー・マウス
朝のドナルド・ダック
詩に吠えかかるプルートー
百三歳になったアトム
ああ
ママ
なんでもおまんこ
不機嫌な妻
有機物としてのフェミニスト
スイッチが入らない知識人〔ほか〕
著者等紹介
谷川俊太郎[タニカワシュンタロウ]
1931(昭和6)年東京生れ。’52年「文學界」に詩を発表して注目を集め、処女詩集『二十億光年の孤独』を刊行、みずみずしい感性が高い評価を得る。以降、現在まで数多くの詩集、エッセイ集、絵本、童話、翻訳書があり、脚本、作詞、写真集、ビデオなども多数手がける。その詩は海外でも広く支持されている。読売文学賞を受賞した詩集『日々の地図』をはじめ、著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
160
「夜のミッキー・マウス」「朝のドナルドダック」、「ああ」「ママ」、「よげん」「ちじょう」題だけみると、対になったような詩。それぞれに固有の調子がある。ちょっと肩すかしかも。解説「谷川俊太郎の詩になりたい」は、漫画家しりあがり寿。初出は、新潮、小説新潮など。2013/06/20
匠
130
全体的に若さとは真逆の悲哀めいたムードが漂う中、ところどころ卑猥な妄想を掻き立てられるような詩もあるのだが、あまりに清々しくて笑ってしまう。簡単な言葉でさらっと深いことを描いていて、何度も読み返すとあぁそういうことか、と納得したりして。今の自分にはまだそんな解釈しかできていないのだけれど、もっと年月を経て読んだら印象はさらに変わりそうな気がする。谷川さんのいろんな側面を垣間見た気もして面白かったし、読み手も自由で良いのだなと感じた。個人的には「よげん」「ちじょう」「忘れること」が特に心に残った。 2014/04/25
ヴェネツィア
130
タイトルは、いくぶん淫靡なような、また魔的なような響きだが、1995年~2003年あたりに詠まれた谷川の詩の拾遺集といったところ。谷川と言えば『二十億光年の孤独』を想起するが、ここではさすがにあのような若々しさはない。それどころか、ところどころに「老い」さえ顔をのぞかせる。でも、まだまだ生も性も健在だ。「いつだったかピーターパンに会ったとき言われた きみおちんちんないんだって?」(『百三歳になったアトム』)―こんな風な諧謔も見せてくれる。そして、何よりもこれらの詩は朗読される時にこそ高々と響き渡るのだ。2013/03/09
青蓮
105
読友さんの感想より。詩は何となく難解なイメージがあるけれど、谷川俊太郎さんの作品は不思議とすっと心に入ってる。そして言葉が持つ豊かなイメージやその深い意味を考えさせられる。谷川俊太郎さんの鋭くて生き生きとした感性が素晴らしい。「なんでもおまんこ」は読んで驚いたけれど、でもこれも生き物としてごく自然な感情、衝動であることに気づく。この詩にはあらゆる生命が芽吹く「春」を感じる。96頁の「五行」の一節が胸をつく。「私には癒しであるものが誰かには絶えない鈍痛」人間の悲しみと深い孤独、エゴイズムを痛感する一文だ。2017/01/21
masa@レビューお休み中
96
予想はしていたが、想像を遥かに超えて大人なミッキーマウスだ。ドナルドも、プルートーもでてくるけど、あのディズニーランドのようなファンタスティックな世界はどこにもない。どこまでも現実的で、どこまでも幻想からは遠い。けれども、谷川の詩がリアルに地に足をつけているかといえば、そうではないのだ。この世界は、喩えていうなら現実の世界から、ちょっと足を浮かせたところにあるような気がしてならない。もしくは、どこかに特殊な扉があって、そこを開けると自在に谷川ワールドへと通ずるような場所があるのかもしれない。2013/08/07