内容説明
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて―。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
著者等紹介
佐藤多佳子[サトウタカコ]
1962(昭和37)年、東京生れ。青山学院大学文学部卒業。’89(平成元)年「サマータイム」で月刊MOE童話大賞受賞。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で’98年度日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
232
物語は16歳という多感な高校生二人。 木島悟と村田みのり。サッカーと美術を通して悩む多感な年頃をみずみずしく描いている。ただ、私の歳のこの手の本は読むのは実はつらい。2011/05/02
SJW
217
小学生の時に初めて会った父親に絵の手解きを受け絵が好きになった木島悟。家族とぶつかり合って、叔父の家で漫画やイラストレーターの仕事を手伝う村田みのり。高校で出会い、すれ違いながら、お互いぶつかりながらも惹かれあっていくという青春小説。文章は短くテンポが早く明確で、周りの人達と上手く関われない部分は、赤裸々で辛くなり頁をめくる手が遅くなった。しかし、サッカーの描写では頁をめくる手が止まらなくなり、やはり佐藤さんのスポーツの描写は卓越している。佐藤さんの絵を描く描写や音楽の描写より、スポーツの描写の方が好き。2019/01/16
よこしま
215
なんなんだろう、心の内から抉るパワーは。湘南の高校に通う男女2人、青春劇なのだけれど爽やかさだけではなく、佐藤さんが醜い部分のほうを強く引き出してるくるから、恋心の複雑さをより魅了してくれる感じ。サッカー部の木島は一度しか会ったことのない亡き父・テッセイに。孤高に生きるみのりは、叔父にあたる通ちゃんに呪縛されつつ。みのりをモデルとした絵1枚を通しての、お互いからの視点の息苦しさ。そして波を立てるように似鳥さんという女性をポツンと投げ込み、2人の心境がより明確に。通ちゃんのモデルは江口寿史でしょうね(笑)2015/01/26
ちょこまーぶる
196
自分の高校生の時は何をやっていたんだと思える一冊でした。二人の同級生は、不器用ではあるけどストレートに感情を表現しながら前向きに生きているように思えて、非常に羨ましく感じてしまった。そして、しっかりと自分のアイデンティティを持ち合わせて、確実に成長していっているようにも思えて、自分自身は同世代の時は異性、学業、そして生き方に悩んだりは、ほとんどしてこなかったなぁ~と回顧してしまって、もったいない高校時代だったと思ってしまいましたね。今後の二人はどんな大人の付き合いをしていくのかが気になる終わり方でした。2016/06/20
ミカママ
164
へーこの作品のオリジナルを書いた時には作者はまだ二十歳前後だったんだ。16歳でこんな恋愛ができたらどんなにいいだろうな、って思いながら読み終わりました。ほんわり、ほっこり。ラストがちゃんときれいにまとまったところも好き。2013/06/21