内容説明
図書室で夢中になった『秘密の花園』『小公子』、でも本が無い家だったので愛読書はなんと『家庭の医学』だった。13歳で出会った『アンネの日記』に触発されて作家を志す。オースター、ブローティガン、内田百〓(けん)、村上春樹…本への愛情がひしひしと伝わるエッセイ集。思わぬ出会いをたくさんもたらしてくれた『博士の愛した数式』誕生秘話や、愛犬の尻尾にふと白毛を見つけた感慨なども。
目次
1 図書室の本棚―子供の本と外国文学(図書室とコッペパン;秘密の花園・小公子・小公女 ほか)
2 博士の本棚―数式と数学の魅力(三角形の内角の和は;完全数を背負う投手 ほか)
3 ちょっと散歩へ―犬と野球と古い家(気が付けば老犬…;わずか十分の辛抱 ほか)
4 書斎の本棚―物語と小説(葬儀の日の台所;アウシュヴィッツからウィーンへ、墨色の旅 ほか)
著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962(昭和37)年、岡山県生れ。早稲田大学第一文学部卒。’88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。’91年(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞を受賞。『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、’06年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。翻訳された作品も多く、海外での評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
324
小川洋子さんが読んだ本の紹介を中心としたショート・エッセイ集。さすがに読者としても、精妙にして緻密な読みを開陳する。自分が読んだ本でさえ、眼を開かれることばかり。特に感心したのが村上春樹の一連の小説に、彼女は常に死の影を見ていること。また、未読の本はいずれもすぐにも読みたくなるほどに魅力を伝えるのが巧みだ。さらには、ところどころで彼女の創作の秘密を語っていたりもする。例えば「小説を書く時、舞台となる町の地図を作り、家の間取りを描くところからはじめる」といった風に。何よりも小説の空間を大切にしていたのだ。2015/03/07
ehirano1
123
長らく積読していてゴメンナサイ、と本書に謝りたいです。著者のやや赤裸々過ぎる点が良い意味でのアクセントになりながら実に軽快なエッセイで、ページを捲る手が止まりませんでした。特に、P.オースターや村上春樹の著作が本書によって、「彼等はそういうことを言っていたんだなぁ」と溜息が出るくらい理解できたのはホントに僥倖でした。 第二弾はないのでしょうか? 2020/03/15
はたっぴ
96
タイトルを見て素通りできず、積読にもしておけず、ムズムズしながら頁を捲ったが、小川さんの言葉の魔術にかかり、どの作品も次々と読んでみたくなる。著者の本に対する情熱の迸りを捉えたくて、Kindleでハイライトをしながら読んでいたら、ラインを引きすぎて真っ黒になる頁もあり、表現方法を学ぶ生徒のような気分で読了。小川さんのようにいつまでも初々しい気持ちで、トキメキながら読書を楽しみたいものだ。早速、ポール・オースターと、村上さんの『中国行きのスロウ・ボート』、武田百合子さんの『富士日記』を読んでみよう。2016/06/02
コットン
92
小川さんが本や自身を語るエッセイ集。紹介本では『中国行きのスロウ・ボート』(以前に読んでいるが再読したくなる語り口!)、『西瓜糖の日々』(すごい小説と紹介され気になる)。自身を語る:家の前に美味しそうな茄子が落ちていて小雨が降り出したとき茄子の下のアスファルトだけは乾いたままだったのが「短編小説のようだ」と小川さんがつぶやく感性がすごい。そして、「小食と言いながらも、食後のおやつは欠かしません。」という可愛い面も…。2014/07/13
hiro
84
小川さんの本を読むのは10冊目。コロナウイルス疲れで読書への意欲もなかなか湧かないが、以前『洋子さんの本棚』を読んで、『アンネの日記』と『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を読もうと思ったように、今回もいい本との出会いを期待して積読本になっていたこの本を読んだ。登場する本は小説だけでなく、エッセ―、ノンフィクション、漫画など幅広く、その中で『手塚治虫悲恋短編集』が気になったので、是非読んでみたい。また小川さんのエッセ―からは、タイガース、ラブラドール、アンネの日記への強い愛を今回も感じた。2020/04/02