内容説明
十五世紀末、ポルトガルがインドへの新航路を発見という、中世の一大ニュースがヨーロッパ中を駆け巡る。トルコ帝国との攻防も続く中、スペインに代表される君主制国家も台頭。ヴェネツィアは統治能力の向上による対抗を図るも、「持たぬ者の悲哀」を味わうことになる。地中海から大西洋へ。海洋都市国家から領土型封建国家へ。新時代の幕開けはすぐそこまで迫っていた。
目次
第10話 大航海時代の挑戦(胡椒ショック;航海者たち;危機;巻き返し;通商と産業と ほか)
第11話 二大帝国の谷間で(都市国家から領土国家へ;統治能力の向上を期して;ヴェネツィアの光と影;元首グリッティ;その息子 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
152
隆盛を誇ったヴェネツィアも冬の時代にさしかかる。16世紀のヴェネツィアに生きた外交官、ソランツォは言う「強国とは、戦争も平和も、思いのままになる国家のことであります。わがヴェネツィア共和国は、もはや、そのような立場にないことを認めるしかありません」。コロンブスの新大陸発見以来、世は大航海時代の幕を開け(とすれば、地中海は辺境になりかねない)、またその海域でさえも、東には強大なトルコ、西にはスペインという二大帝国の狭間にあって、孤軍奮闘するヴェネツィア。頼みとする人的資源も、何といっても数が少なすぎるのだ。2014/03/14
KAZOO
91
大航海時代が始まり、ヴェネチィアにもその波が押し寄せてきます。また前の巻から続くトルコとの攻防に対しても徐々に疲弊していく様子が伺われます。都市国家の時代も徐々に終わりを告げてすぺにんなどを始めとする君主制国家の時代へと移っていく中でヴェネチィアはどのような形で生き残りを図るのか?いよいよ次の巻で終わりです。2015/07/16
優希
71
時代は大航海時代に突入したようです。トルコ帝国との攻防の中、スペインなどの君主制国家も台頭してきて、ヴェネツィアはかなり危機的状況に置かれたことでしょう。「持たぬ者の悲哀」という言葉はまさにこのことを言うのですね。地中海から太平洋へ、海洋都市国家から領土型封建国家へと新たな時代へと導かれているのだと思いました。2018/12/27
kawa
44
「大航海時代の挑戦」と「二大帝国のはざまで」の2章で、トルコ帝国との攻防、スペイン等の君主制国家との駆け引きが描かれる。喜望峰回りを開拓したポルトガルとの香味料貿易をめぐる争いや、トルコ帝国のスルタンが実は奴隷の血を引いていることや、その親衛隊であるイェニチェリ軍団が元キリスト教徒であった等は興味深いのだが、前巻あたりからの解説的記述がやや退屈で度々寝落ち。最終巻はどのように盛り上げて絞めるのか。不安半分、期待半分。2019/07/12
piro
34
「強国とは、戦争も平和も、思いのままになる国家のことであります。わがヴェネッア共和国は、もはや、そのような立場にないことを認めるしかありません」大航海時代の幕開け、そして君主制国家の台頭。地中海が「世界」であった時代は終わり、都市国家ヴェネツィアの勢力にも陰りが見えます。それでも過去の栄光に奢ることなく冷静に現実を見据える所は流石。トルコ、スペインといった規模で勝負を仕掛ける大国に対抗するため、交易だけでなく手工業拡大による多角化、そして絶妙な政治力で危機を切り抜ける姿にヴェネツィアらしさを感じます。2020/11/14