内容説明
東方との通商に乗り出し、地中海の制海権を握ろうとしたのは、ヴェネツィアだけではなかった。アマルフィやピサといった海洋都市国家が次々と現れ、なかでも最強のライヴァル、ジェノヴァとの争いは苛烈を極めた。ヴェネツィア共和国は、個人主義的で天才型のジェノヴァの船乗りたちといかにして戦ったのか。群雄割拠の時代を生き抜くヴェネツィア人の苦闘の物語。
目次
第6話 ライヴァル、ジェノヴァ(海の共和国;アマルフィ;ピサ;ジェノヴァ;ジェノヴァの商人;ジェノヴァ対ヴェネツィア;ヴェネツィアの二人の男;キオッジアの戦い)
第7話 ヴェネツィアの女
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
162
前半は宿命のライヴァル、ジェノヴァとの攻防を、後半ではヴェネツィアの女を描いている。1397年にジェノヴァに、対岸のキオッジアまで奪われ、海上を徹底的に封鎖された時がヴェネツィアが迎えた最大の危機であった。文字通りに四面楚歌の中で、よくぞ挙国一致でその難局を切り抜けたものだ。あわや、我々は今日あるヴェネツィアの姿を見られなかったところだったのだ。後半で興味深いのは、「カヴァリエレ・セルヴェンテ」という制度。フランス人ならずとも、夜に貴婦人をベッドまで送り届けて、「本当にそれでおしまい?」と思うだろう。2014/03/12
KAZOO
108
この第3巻ではヴェネツィアのライバルのジェノヴァ、と当時の女性について書かれています。昔は日本の戦国時代の大名と同じでイタリア国内でも都市国家とくに海洋国家のピサ、アマルフィ、ジェノヴァなどがライバルであったようです。ピサやアマルフィなどは今は観光地としてしかイメージはないのですが。女性については絵などを多用して貴族階級から下層階級までの女性について分析されています。塩野さんの本は絵や地図などで分かりやすくされているのが一つの特徴ですね。2015/07/11
優希
79
ヴェネツィアのみならず、アマルフィやピサなどの海中都市にも触れています。地中海制覇を狙っていたのはヴェネツィア以外にも次々と現れたのですね。中でもジェノヴァとの争いは手に汗握る面白さでした。群雄割拠の時代に入り、如何に生き延びるか、苦悩が見られます。2018/12/27
kawa
41
120年以上に渡り断続的に続く海洋国ジェノバとの闘いが描かれる。クライマックスはジェノバ艦隊、ハンガリー、バドヴァの三国同盟に本島近くまで肉薄されるキオッジアの戦い(1379~1380)。ヴェネツィア危うしだが、潟(ラグーン)をよく知るヴェ軍が地の利と得意の挙国一致集団体制で個人主義のジェノバを退け、三度めの全盛時代を迎える。後半はヴェネツィアの女に関するあれこれ。政治上の影響力を行使した女性は見当たらないながら、トルコのスルタンの妃となったチェチリア・バッホを巡る諜報活動の様子が興味深くも面白い。2019/07/06
ホークス
38
歴史を語る言葉は、話者のハラワタにまみれている。近い過去なら話者自身の呪詛や自慢話にすり替わり、遠い過去なら頑迷な現代感覚で先人を裁きがちである。塩野七生氏は人間の本性を踏まえ、さらに歴史を通じて人間を探究する。想像力で文化や時代の違いに分け入って行く。本書はヴェネツィア中心にライバル都市国家群、西欧やイスラム諸国の戦いと盛衰を骨太に描き、そこで挑戦し挫折する先人の実感に迫って行く。その手法に白洲正子との共通点を感じた。実は本書の注目は「ヴェネツィアの女」の章で、巨視と微視を行き来して女の本質を語っている2016/10/23