内容説明
ヴェネツィア共和国は十字軍の熱狂に乗じて東地中海に定期航路を確立し、貿易国としての地歩固めに成功。異教徒との通商を禁じるローマ法王を出し抜き、独自の経済技術や情報網を駆使して、東方との交易市場に強烈な存在感を示した。宗教の排除と政治のプロの育成に重点をおき、強力な統治能力を発揮した内政にも裏打ちされた「ヴェネツィア株式会社」の真髄を描き出す。
目次
第4話 ヴェニスの商人(交易商人(その一)
資金の集め方
交易市場
マルコ・ポーロだけではない
定期航路の確立
海上法
羅針盤と航海図
船の変化
中世の“シティ”
交易商人(そのニ))
第5話 政治の技術(共和政維持の苦労;政教分離;政治改革;クィリーニ・ティエポロの乱;「十人委員会」;元首ファリエルの乱;政治と行政)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
150
この巻はヴェネツィアの経済と政治の考察。章構成がこうした順序になっているのは、ヴェネツィアにあっては、経済こそが政治のあり方を決定していたからだ。12世紀後半のヴェネツィアに生きた商人ロマーノ・マイラーノの生涯が紹介されているが、彼にあっては(おそらくは他の誰にとっても)国家の浮沈が、そのまま自己の浮沈に直結していた。20数年も故国に帰らず、東地中海で商売に邁進していた彼のような存在は珍しくなかったらしい。マルコ・ポーロでさえ、北京まで行ったことをのぞいては、これまた特別な存在でもなかったようなのだ。2014/03/11
KAZOO
83
第二巻は、ヴェネツィアが発展した基礎としての経済と政治について述べられています。ヴェニスの商人としてシェイクスピアの戯曲にまで取り上げられています。また政治家を育成して、内政を固めていくということも発展の基礎にあることをすでにわかっていたということだと思います。2015/07/10
優希
75
ヴェネツィアの政治と経済が語られています。貿易国としての地固めに成功し、独自の技量を用いて存在感を示すようになったのは流石としか言えません。宗教の排除や政治に精通した人物を立てることでの統治能力を見ても強力な力を発揮したことがわかります。2018/12/27
kawa
47
本巻は「ヴェニスの商人」「政治の技術」の章建てで、経済と政治からベネツィアの繁栄の理由を解き明かす。経済面では、国有船による定期航路を広く中小企業者(幅広い資本調達とその裏付けとなる複式簿記を編み出す)に開放し情報網を駆使、東方の交易市場を支配。政治面では、商人らを中心に共和制を布き、特定の者に権力が集中することや、宗教が政治経済に影響を与えることを排除する巧妙な体制を築く。面白味に欠ける地味な課題をひとつひとつクリア-していくさきに国家の繁栄があるのかも知れない。そんな「ベネツィア株式会社」が描かれる。2019/07/04
piro
36
第二巻はヴェネツィアの商業と政治の話が中心。海の都が永らえた大きな理由である「ヴェニスの商人」の繁栄、そして独特な共和政体と官僚機構について語られます。当時のキリスト教世界にありながら、法王派・皇帝派どちらにも属さず、絶妙な立ち位置を維持したヴェネツィア。商人としての精神がベースにあるからこそ、現実主義を貫き、バランス感覚を保ちつつも、個人の利益を認めない共和政体を構築、維持する事ができたのだと思います。それにしても制度や仕組みをこれだけシステマティックに作り上げる力は凄いなぁ。2020/10/09