内容説明
“バアさん”が死んだ。上野警察署裏手にあって、昭和30年代前半に著者たち警察回りの記者たちの溜まり場となっていたバー『素娥』のマダムのことである。“バアさん”の死と共に象徴的に終わりを告げたひとつの時代を、彼女が残した大学ノート5冊の思い出をもとに振り返り、あの「最後の社会部の時代」に「人生の放牧期」を謳歌した若き新聞記者たちの生態を再現する回想録。
目次
第1章 バアさんの回想録
第2章 警察回り無頼
第3章 「東京の素顔」
第4章 “黄色い血”キャンペーン
第5章 深代惇郎の死
第6章 バアさんの血
著者等紹介
本田靖春[ホンダヤスハル]
1933(昭和8)年、旧朝鮮・京城生れ。早稲田大学卒業後、’55年、読売新聞社に入社。社会部、ニューヨーク支局などで勤務した後、’71年に退社し、フリーのノンフィクション作家として独立する。’84年に無頼派記者の挫折を描いた『不当逮捕』で、講談社ノンフィクション賞を受賞。徹底した取材で事件や社会の問題を鋭くえぐった。著書に、吉展ちゃん事件を扱った『誘拐』、寸又峡の金嬉老事件を扱った『私戦』などがある。2004(平成16)年12月死去
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感想・レビュー
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taka
2
行きつけの酒場のバァさんを中心に、当時の新聞社の生活が垣間見える。かなり雑というかおおらかな職場。サービス残業という考え方は無いようだ。2019/11/16
ふ
1
◎2023/09/21
tan_keikei
1
著者が警察回りの記者時代のたまり場バー「素娥」のマダムだったバアさん死から始まる回想記。台湾出身のバアさんが人脈を頼りに日本で生き抜いた一代記でもあり、記者が組織人ではなく個人として輝いていた時代の青春期でもある。著者が社会部記者時代の放埓なエピソードの数々はいまの時代にはない痛快さとエネルギーに溢れている。しかし、戦後が終わり、高度経済成長期に入るにつれトーンが暗くなっていく。そこにあるのは時代に乗り切れなかった者を置いて自分だけが先に行ったと思っている著者の悔恨と一時代への哀惜なのだろう。2013/05/05
o.r
0
社会部がまだ社会部であった頃-。新聞記者として活躍した著者が見た、バアさん、深代惇郎、そして戦後の日本社会。資料として、読み物としてとても面白かった。2013/09/15
jdrtn640
0
同じ著者の回想録らしい『我、拗ね者として生涯を閉ず』も読みたくなった。2010/03/15