内容説明
未婚の母を決意したタマヨが食べたいという「たたみいわし」。幼なじみの墓参の帰りに居酒屋で味わう「かつおへそ」。元放蕩息子のロクさんが慈しみつつ食す「ひょうたん」。ほかにも、「青ムロくさや」「からすみ」「ドライトマト」など68種。江戸の達人が現代人に贈る、ちんみと酒を入り口にした女と男の物語。全編自筆イラスト付き。粋でしみじみ味わい深い、著者最後の傑作掌編小説集。
著者等紹介
杉浦日向子[スギウラヒナコ]
1958‐2005。東京生れ。文筆家。「通言室乃梅」で漫画家としてデビュー。以来、一貫して江戸風俗を題材にした作品を描き、1984(昭和59)年『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞、’88年『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞を受賞。エッセイストとしての著書も多いが、『ごくらくちんみ』『4時のオヤツ』では小説家としても腕の冴えを見せた。2005(平成17)年7月、下咽頭がんのため46歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
294
かつて「小説新潮」に連載されていた、全部で68篇からなる掌編小説集。すべて表題通り珍味を巡るお話。漫画も絶品だったが、文章もまた絶妙。本当に美味しそうに書いている。例えば「炊きあがったごはんを、吹き冷まして一口。あえぐうれしさ」、「旨みの凝縮。表面に鮒の脂がフロスト状に膜をはる。身はゼラチンのなめらかさ。オレンジの卵はほくほくと粒立ち」といった具合。そして、この本では全編に亘って、食べることだけではなく、生きることの喜びに溢れていた。その日向子さんは、もういない。この本が最後になってしまったのだ。2012/10/29
優希
94
面白かったです。珍味にお酒、それを小道具に紡がれた短い人生の一コマ。食べたことのないものばかりだけれど、そっと口に入れて味わっているような感覚になります。酒と肴の取り合わせが絶妙で、明日への一歩をふっと軽くしてくれるような雰囲気を感じました。どこか安心感がありながら粋。この作品が遺作というのが残念でなりません。2016/05/08
ふじさん
86
昔、週刊ブックレビューで紹介された本だと思い本屋で見つけて買った本だ。長い間生きてきたが、食べたことのないちんみがなんと多いことか。本に出てくる物は、口にしたことがないものが多かった。ちょつと残念な気がする。最近は、生臭いものが昔より苦手になり、口にする機会もめっきり減った。もともとが、ウイスキーやバーボン等洋酒が好きなのでなおさらだ。ちんみと酒を入口にした男女の物語。粋で味わい深い、著者最後の傑作掌編小説。この本片手に、ちんみで酒を嗜みたいものだ。 2021/07/05
カムイ
84
杉浦日向子氏の漫画は数冊読んでいるが小説は初、3、4ページの物語に紡がれる、酒と珍味の至福時間を堪能した。【ばくらい】は東北ヘ旅行の時に居酒屋で初お目見え!色鮮やかな物体そしてこれが当に日本酒にピッタリ珍味中の珍味であった海鼠腸と海鞘!無敵でしょ🤩68の掌編には男と女のマリアージュなのです。さて今夜は日本酒をお伴にゴッコの唐揚げと杉浦日向子氏を偲んで江戸満喫と洒落ますかね。2021/09/27
おくちゃん🌸柳緑花紅
74
一冊丸ごと「ごくらく」珍味。お酒。粋なお話。最初の「青ムロくさや」~最後の「たてがみさしみ」まで全部取り寄せてお酒と一緒に楽しみたい。そして杉浦日向子さんの挿絵がまた良い。もう涎物です。熱燗呑めるようになりたい!「ごちそうさまでした。とっても美味しい作品です」2014/04/24