新潮文庫
貝がらと海の音

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  • サイズ 文庫判/ページ数 424p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101139036
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

郊外に居を構え、孫の成長を喜び、子供達一家と共に四季折々の暦を楽しむ。友人の娘が出演する芝居に出かけ、買い物帰りの隣人に声をかける―。家族がはらむ脆さ、危うさを見据えることから文学の世界に入った著者は、一家の暖かな日々の移りゆく情景を描くことを生涯の仕事と思い定め、金婚式を迎える夫婦の暮らしを日録風に、平易に綴っていく。しみじみとした共感を呼ぶ長編。

著者等紹介

庄野潤三[ショウノジュンゾウ]
1921(大正10)年、大阪府生れ。九州帝大を2年で終え、海軍に入る。戦後、教職を経て朝日放送に勤め、小説を書き始める。’54(昭和29)年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。平穏な日常の危うさを描き、「第三の新人」の一人として活躍する。’60年の「静物」で新潮社文学賞、’65年の「夕べの雲」で読売文学賞、’72年の「明夫と良二」で赤い鳥文学賞、毎日出版文化賞を受賞。現在芸術院会員
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐々陽太朗(K.Tsubota)

103
ひと言でいうと満ち足りた老後。ここには幸せのかたちがある。それは普遍的な幸せではないかもしれない。でも私がそうありたいと願う幸せそのものだ。何もかもがそろっているというのでははい。贅沢をしているのでもない。老いに伴うちょっとしたイヤなこともある。たとえばものを落としそうになってもとっさに反応できない。お茶をこぼしてしまうこともある。そうした老いを受け入れて、今ある現状を、毎日を肯定する。歳をとれば誰もが自然にそのような境地になれるわけではない。おそらくそうあるために積み重ねてこられたものの結果だろう。2019/08/31

アン

92
四季の変化と共に、郊外に住む金婚式を迎える夫婦の日常を綴った作品。季節を告げる大切に育てた庭の花々、心のこもった料理や贈り物、巣立った子供達や孫を見守る愛情、ご近所や知人との温かい触れ合い。長女や孫娘の言葉は喜びや真心が伝わり、家族の集まる機会が多くあるので、楽しそうな様子がありありと目に浮かんできます。夫婦のさり気ない日々の積み重ねの中で、特に心を打たれるのは感謝の念と相手を気遣う優しさです。こんなふうに心豊かに年を重ねられたら素敵だなと。貝がらに耳を澄ませ、穏やかな波音に癒され光ある明日へと。 2020/06/12

けろりん

62
「貝がらを耳に当てると、海の音が聞えるの」「よく知ってるね。」孫娘と妻との睦まじい会話の一端を題名に冠した、『山の上の家』で暮らす作家夫妻の日常。巣立っていった子ども達への想い、隣人、旧友との温かい交流、巡りくる季節への新鮮な驚きと喜びを、深い感謝の念と共に丹念に綴った円熟の筆致は、読者を波穏やかな美しい海の懐に抱かれたような安らかに豊かな心地へと誘う。孫の為に探す絵本、吟味しとりどりに詰め合わせた小包、傘をさして愛でる雨の中の一輪の花。何度でも優しい海の音を聴きたくて、貝がらを耳に当てるように本を開く。2020/02/13

りつこ

37
いただいたものや作ったものをご近所におすそわけし、娘や息子の家を訪ね、おくりものをし合う。頂いたお花を飾り、頂いたお総菜を味わい、妻の作ったおはぎをお供えし味わい、孫の手紙や習字を堪能する。なんて豊かな暮らしなのだろう、昔は物がないからこんなふうに暮らせたんだねと思って読んでいたら、そんなに昔のことではないということに途中で気づいて驚く。消費することだけが幸福なのではないと教えてくれる。素敵。2016/07/21

しおり

19
庄野潤三さんの日記形式のお話。素敵なご家族でした!。夫婦仲良く、日々の生活の中 沢山の嬉しい、花を愛し美しいと思う気持ちが、読んでるこちらにも気持ちよく伝わって来ました。長女の方が明るくて それに元気をもらい、お孫さんたちの可愛さに頬がゆるゆるでした(^^)2017/05/21

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