内容説明
東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。
著者等紹介
城山三郎[シロヤマサブロウ]
1927‐2007。名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎えた。一橋大卒業後、愛知学芸大に奉職、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』により文学界新人賞、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受け、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞受賞の『落日燃ゆ』等、多彩な作品群は幅広い読者を持つ。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
214
第28回毎日出版文化賞・第9回吉川英治文学賞受賞作。文官でただ一人、A級戦犯となり、絞首刑となった広田弘毅を描いたもの。著者の広田弘毅への目は優しく、吉田茂とは対比的に書いているのがひどく印象的だった。最後の潔さも含めて、ベストセラーになったのもわかる好著だと思う。
馨
208
とてもわかりやすかった。 優秀な外交官だった広田氏、もしも違う時代、あともう50年後に生まれていらっしゃれば、きっと良い日本を作るために世界中で活躍し広く評価されただろうと思います。 それにしても、当時の日本は一個人の意見など通る余地もないほど戦争へ向かって軍部も国民も一直線だったんですね。賢い人は日本がどうなるかわかっていたけれど一握りだった・・。2013/01/23
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
196
「物来順応」「自ら計らわぬ」の信条を貫いた一人の男の生涯。青年時代に尊敬できる上司と出会い、外交官を自らの使命と定めた広田弘毅氏。時代の渦により外相、さらに226事件直後に総理に祀り上げられた。増長する軍部と向き合いながら、命を賭して戦争防止に努めながら、東京裁判ではA級戦犯として絞首刑を宣告された。刑執行に際して、軍人が「万歳」を叫ぶのを「マンザイ」と呟き、運命を従容として受け入れた。同期の野心家・吉田茂との比較が壮大な物語に一層の奥行きを加える。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞に輝く伝記小説の傑作。2015/08/16
ykmmr (^_^)
194
以前から疑問なのだが、スーツ男の広田が、絞首刑になったA級戦犯の中で、いつも東條に続いて二番手に名前が挙がっている。そこからもう、違うなあと思ってしまう。元々、政治とはあまり関係のない家柄から、『秀才』と周囲に担ぎ上げられて、両太閤に近い出世ぶりを果たす訳だけど、『実力』以外の彼を囲む物がキツくて大変であったのではないかと同情すらしてしまう。幣原・近衛・松岡らと右往左往しながらの駆け引き、ヨーロッパの国に目が効きながらも誤解されて、生家と当時のテロ的集団の関わりも、当時では処罰対象。2021/12/15
mitei
189
本書はA級戦犯指定され死刑にされた人物、廣田弘毅が主人公。改めてこの時代の政権運営の大変さがよくわかるし、連合国の理不尽な死刑執行に腹立ちを覚える。でももっと自己主張する人であれば死刑は免れたかもしれないと思うといたたまれない。2010/01/27