内容説明
直木賞受賞の表題作は、株主総会の席上やその裏面で、命がけで暗躍する、財界の影武者ともいえる総会屋の老ボスを描く評判作。ほかに交通事故の時だけタクシー会社の重役の身代りで見舞いや弔問にゆく五十男の悲しみを描いた『事故専務』をはじめ、資本主義社会のからくり、陰謀などを、入念な考証に基づき、迫力あるスピード感と構成力で描く本格的な社会小説7編を収める。
著者等紹介
城山三郎[シロヤマサブロウ]
1927‐2007。名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎えた。一橋大卒業後、愛知学芸大に奉職、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』により文学界新人賞、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受け、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞受賞の『落日燃ゆ』や『毎日が日曜日』『もう、きみには頼まない』『指揮官たちの特攻―幸福は花びらのごとく―』等、多彩な作品群は幅広い読者を持つ。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
201
第40回(1958年)直木賞。 経済小説のパイオニアと言われる 城山三郎の出世作である。 大洋銀行をめぐる錦城と 扇山一派の つばぜり合いが面白い。 株主総会に関わる 総会屋の動きが、 生き生きと読者に伝わる… 総会屋として 生きた老人 錦城の人生の 凄まじさ、哀しみが、骨太に描かれている、 そんな作品だった。2017/09/17
じいじ
84
1958年(昭和33)の直木賞作品。〇十年ぶりに読み返してみた。大企業の裏方「総会屋」を主人公に描いた痛快経済小説だが、まったく旧さを感じることもなくて面白い。企業の帳簿に載らない「裏カネ」を食い物に生きる男たち、“企業のダニ“とも揶揄される総会屋のダーティ・イメージを払拭してくれる物語です。気骨あるご老体の人間味に、スカッと気分爽快にさせていただきました。読み終えて、このような主人公の下でチカラいっぱい働いてみたいものだ。 2021/07/09
おいしゃん
83
【直木賞作品】氏の作品は「打たれ強く生きる」に続き、2冊目。7編の社会派小説は、扱っているモノや出来事は古くても、どれもテーマは今に通ずるものばかり。50年前に書かれたとは思えないほど瑞々しく、読みやすい。印象に残ったのは、交通事故の時だけ重役の身代わりになり、見舞いや弔問にゆく50代のタクシー会社員を描いた「事故専務」か。2015/08/23
hit4papa
50
経済小説の開祖(?)の手による短編集です。著者の作品は、読まず嫌いだったのですが、世の中事が多少分かるようになったからか愉しめました。総会屋の最期の大一番を描いたタイトル作は、男の生き様としてしびれます。サルベージを生業にする男たち「浮上」、会社を追われた御曹司の復権「社長室」、新聞社航空部長の野心「プロペラ機・着陸待て」他、舞台となる業種・業態がバリエーション豊かな作品集です。逆境にさらされながら奮闘する人々の姿が印象に残ります。半沢直樹のようにスカっといかない分現実的ではありますね。【直木賞】2018/04/26
たんかれ~
33
短編集。昭和中期、随所にまだ敗戦の空気が残り、皆がむしゃらに働いた時代。「社長室」が一番面白かった。2017/06/26