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新潮文庫
絹と明察 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 372p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101050379
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

安寧な家族主義経営に忍び寄る悪魔。日本的思慮と西欧的知性の衝突をアイロニカルに描く傑作。

駒沢紡績の社長駒沢善次郎は、自分を〈父〉とし従業員たちを〈子〉とみなす家族主義的経営によって、零細な会社を一躍大企業に成長させた。しかし、彼の外遊中に、ハイデッガーを奉ずる政財界の黒幕岡野の画策によってストライキが決行され、三カ月間の争議の後、会社は組合側に屈する――。近江絹糸の労働争議に題材をとり、日本的心情と西欧的知性の闘いを描いた長編小説。

内容説明

駒沢紡績の社長駒沢善次郎は、自分を“父”とし従業員たちを“子”とみなす家族主義的経営によって、零細な会社を一躍大企業に成長させた。しかし、彼の外遊中に、ハイデッガーを奉ずる政財界の黒幕岡野の画策によってストライキが決行され、三カ月間の争議の後、会社は組合側に屈する―。近江絹糸の労働争義に題材をとり、日本的心情と西欧的知性の闘いを描いた長編小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

288
三島には珍しい労働争議を題材にしたもの。しかも、争議そのものは、一応労働者側の勝利で終わっている。物語を影で進行させていくのは、ハイデガーの信奉者である岡野だ。彼は常に冷静沈着であり、人間心理の分析にきわめて長けている。しかも、ある意味では俗物の極みでもある。泥臭く、田舎っぽさを全身から溢れさせる駒沢よりも、かも知れない。「父と子」の問題が、たしかにテーマの主軸であり、労働争議を背景にした社会の大きな変動がこれに連動して行く。また、菊乃、房江、弘子の3人の女たちのそれぞれを書いていく三島の視点が見事だ。2012/09/06

優希

76
労使関係を描いた物語。三島にしてはこの手の話は珍しいと思います。大企業に成長した会社が駒沢善次郎の外遊中にストライキが決行されることで、組合へと屈する流れが恐ろしくもありました。指南者がいないだけで成功は壊れることがあるのだと。日本的心理と西欧的知性の闘いが現実的恐怖として存在しているのです。2019/04/05

安南

54
政財界のフィクサーとして一目置かれている岡野、神道系宗教法人を立ち上げた正木、繊維同盟の役員で大槻を助け労働争議を煽動した秋山。右翼団体《聖戦哲学研究所》元所員の男達の戦後の処し方、昏い欲望にたまらないエロスを感じる。特に元左翼で戦時中転向し、戦後また左翼に戻った秋山のいやらしさはピカイチだ。ここまでアイロニカルに描きながら、翌年には実際の政治行動に身を投じる事になる三島40歳直前の転機となった作品。合理的且つ理性的なものを求めながら、義理忠義、浄瑠璃的日本人の心性を否定しきれない岡野に三島を重ねた。2015/11/10

双海(ふたみ)

39
今日は朝から三島さんばかり読んでいます。なんというか、私の生命力が削がれていく感じ。ぐったり。疲れちゃった。でも良い読書ができた気もします。2015/07/16

活字の旅遊人

38
三島由紀夫の企業が舞台となっている小説。近江絹糸という会社であったストライキがベースになっているらしい。社長の駒沢は従業員を家族と見なす。言葉はきれいだ。ではその家族とは? その単語が介在するが故に、立場によって解釈が真逆になる。それぞれが都合のいいように利用しているのか? 駒沢社長は本気で良かれと思っている。であれば労働者側とは交われない。実に難しいところだ。フィクサー岡野、芸者菊乃の心情も面白い。これら内面の解説に字数を使っているのに読み疲れが余り来ないのは、流石の力量。三島由紀夫、まだまだ読める。2024/01/10

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