夜の寝覚

夜の寝覚

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  • サイズ A5判/ページ数 621p/高さ 24cm
  • 商品コード 9784096580288
  • NDC分類 918
  • Cコード C1393

出版社内容情報

夫や肉親との軋轢に思い悩む女主人公の姿を描く、平安朝文学の傑作。

「夜の寝覚」の伝本は、現在、完全な形では存在せず、すべて中間と末尾に大きな欠落部分を持っている。そのため我々はこの作品の半分以下しか読むことができず、それが多くの読者を得ずに、作品の知名度を低くしている。しかし実際には、作者(菅原孝標の娘説が有力)の、主人公における女の業の追及と克明な心理描写によって、平安後期の物語の傑作とされ、専門家の評価は高い。 姉の婚約者・中納言と宿命的な関係となり、懐妊する女主人公・中の君は、姉と反目し合い苦悩するが、その後結婚した老関白とは死別し、遺児を守る未亡人となり、現実に目覚めて強い女に成長する。しかし中の君に執拗に言い寄る中納言、また帝の積極的な横恋慕、さらに周囲の女性たちの嫉妬も加わり、日夜煩悶する。そして、中の君の生霊が中納言の妻を苦しめる事件も起り、苦悩の末に出家を志すが、それも子ゆえに果たされない。恋愛の苦しみ、女性の苦しみ、母の苦しみ、そして男女を超えた人間の苦しみと、書名のとおり、寝覚めては苦悩に陥る中の君の様子が綿々と描かれる。欠落部分の内容も様々に推測されて、興味をかきたてる異色の作品である。 本作品研究の第一人者による克明で平易な注釈と、こなれた現代語訳が備わっていて、古典文を親しみやすいものにしている。

鈴木 一雄[スズキ カズオ]
著・文・その他

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

りょく

3
寝覚君と男君を中心に、登場人物の心の機微やすれ違いを丹念に丹念に描いていく物語。こんなに徹底した心理主義が平安時代に確立していたのかと驚かされる。作品それ自体には粗も多く、『源氏物語』の模倣的な要素もあるが、それだけで片付けるにはあまりにもったいないほど、人間の内面を深く掘り下げて物語を構成する新しさがあると思う。 女/娘/母であることの窮屈さや、男君や父親にわかってもらえない絶望感、諦め。物語を通して女君に付き纏う生きにくさに共感してしまうところに、女性読者を惹きつけてやまなき特徴がある。2022/11/22

渡邊利道

3
実は未読だったが、津島小説の参考に読んでいくうち引き込まれた。姉の夫と結婚前でしかも人違いで契り子を孕んだ妹姫が、ひ弱な少女から懊悩しつつ母として強くなっていく物語はきめこまやかな心理描写が特徴的だが芯の強さがあり大変感動的。音楽が重要なモチーフとなっているのもいい。2016/08/03

たていす

1
授業のために再読。読めば読むほど面白いことに気付きました。卒業まで引っ張ってもいいかも…なんて思えるほどの内容で、欠落部分を探るのもまた楽しそうです。人間関係がとても複雑で、元をたどれば全部繋がっていたり。これを漫画にでも起こせば、今まで知らなかった人も絶対に面白いと感じるはずです。2013/12/17

ぽこ

1
愛した人は妻の妹だったという禁断の愛。男君と女君は一夜限りの逢瀬で子供も出来てしまいます。女君は必死にその事実を隠し、自分の身の上を嘆きながらこっそりと子供を産み、男君は世間体を気にしながら、生まれた子を引き取り、隠れて女君を愛し続けます。お互いに惹かれあい、頼りながらも、すれ違う。男と女って決してわかりあえない生き物なんだなぁと感じます。とても面白いので現代語訳部分をぜひ読んでみてください。2012/06/12

たていす

0
読もうと思うかと言われると、面倒になる重みです。けれど、読んでみると面白いもので、欠陥部分が気になります。源氏物語と対比しながら読むととても興味深いです。2013/11/17

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