内容説明
葡萄牙の富裕な商人と、その男に売られた美しい人妻から生まれた不義の子、四郎。我欲のため信仰を都合よく解釈する実父に疑いを抱き、神父の弄び者とされ、周囲から「悪魔の子供」と蔑まれた四郎は、いつしか天主への復讐心を抱くようになる。やがて実父の手で母親とともに日本へ送り返された四郎は、母親譲りの美貌と身に付けた異端の能力で隠れ切支丹たちを魅了し、神の御遣いと崇められ始めるが…。3万7千人が殺害された日本キリシタン史上最大の悲劇「島原の乱」を、神をも恐れぬ強烈な解釈で描いた衝撃作。
著者等紹介
嶽本野ばら[タケモトノバラ]
京都府宇治市生まれ。2000年『ミシン』で小説家デビュー。03年『エミリー』、04年『ロリヰタ。』が三島由紀夫賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
95
天草四郎を実はポルトガル人とのハーフだったとする大胆な設定の歴史奇譚。著者初読み。序盤は人間の醜さと淫靡な描写に挫けそうになった。「悪魔の子」と虐められ、ポルトガルで辛い幼少期を過ごした四郎。孤独の中で身につけた幻術とその美しさで、日本に送られてからは「神の申し子」と祭り上げられる。醜悪な大人達の中で神を恨むしかなかった四郎が、島原の乱の蜂起でようやく自身を受け容れていく様が美しく哀しい。2016/11/21
財布にジャック
41
3万7000人とされる島原の乱の参加者が主と仰ぐカリスマの天草四郎の物語。こういう解釈もあったのかぁと思わせる展開で、歴史の重みを感じさせつつも、読みやすく惹きつけられました。トシという少女が登場しますが、本当にけなげで涙を誘うんです。そして、物語の最後はやはり涙なくしては読めませんでした。2010/07/18
はらぺこ
36
燃える原城本丸の天草四郎を『魔界転生』の沢田研二のイメージで読んでたんですが、側近の女達一人一人に語りかける場面では途中から金八先生をイメージしてしまったので最後は変な天草四郎が横たわってしまいました。 2015/04/26
猫ぴょん
32
下妻物語(映画も観たよ✨)以来の嶽本野ばら作品。 職場でコロナとインフルエンザが同時発生😱なんとか罹患しなかったけど本を読む暇がなかった〜😢 でもこの本はイッキ読み✨ 読ませる力があると言うかグイグイ来る。 嶽本野ばらさんの天草四郎の解釈は衝撃的だけどアリ。 キリシタン弾圧モノは何冊か読んだけど、どの本も悲しいしツラい。 なんで神は助けてくれないんだろうね。 真っ先に「転ぶ」自信ある我。 なんとなく泣かないだろうなと読んでたけどラストはいつの間にか泣いておりました🥺 2023/11/10
りりす
22
嶽本野ばらは大好きだけど、テーマから敬遠していた一冊。結論から言うと、いつもの野ばらちゃんです、読みましょう!私ももっと早く読めばよかった。日陰者を書かせたら多分北半球で一番の野ばらちゃんの真髄でした。信仰というと仰々しいし胡散臭いかんじがするけど、つまりは何に救われたか。それは野ばらちゃんの他の小説ならお洋服であったり、特定の個人であったり、芸術であったり。「何のために生まれて何をして生きるのか」はアンパンマンだけど、この話ひいては野ばら作品の精神は、「何のために生きて何を守るため戦うか」です2017/03/26