内容説明
大好きだった妻の澪が亡くなって1年、身体にさまざまな不具合を抱えた巧は、町の小さな司法書士事務所に勤めながら、6歳になる一人息子の佑司とひっそりと暮らしていた。再び巡ってきた雨の季節の週末、いつもどおりの散歩に出かけた町はずれの森で、この父と子二人に奇跡が訪れる。哀しい未来を知りながら、それでも愛しい存在に向かって発せられる言葉。その深く強く優しい決意に、きっと心打たれるはずです。市川拓司ワールドの原点をなす最上の恋愛小説。
著者等紹介
市川拓司[イチカワタクジ]
1962年、東京都出身。2002年、『Separation』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kanegon69@凍結中
171
とても胸がキューってなる純愛小説でした。紡がれる文章もとても優しく美しいですね。頭の中で様々な場面がとても色鮮やかに再生されました。切ない話であることは読み始めてすぐに気付きましたが、悲しいだけの話ではなく、一緒にときめいたし、大いに暖かい愛情を感じられました。とても自然に感情移入しやすかったですね。後半の展開が巧く、主人公の二人の切なる胸中が乗り移ってきたかのようにとても胸が詰まりました。幸せの形は本当に人によって色々だけれども、この二人にとっては代えがたい幸せだったと思いたい。とても素敵な作品でした。2020/03/07
佐々陽太朗(K.Tsubota)
134
この種の小説を読むのはカッコワルイ。こっぱずかしいのだ。しかしやはりボロボロ泣いてしまった。この小説は加納朋子氏の『ささらさや』の如く家族を想う愛の小説として、恩田陸氏の『ライオンハート』あるいはロバート・ネイサン氏の『ジェニーの肖像』のように時を超えた奇跡を描いたファンタジーとして並び称されるべきだ。人からカッコワルイと思われたくなければ読まなければいい。笑わば笑え。そういうことだ。http://jhon-wells.hatenablog.com/entry/2016/11/23/0149162016/11/21
takaC
111
ずいぶん読み進んでから前に読んだことがあることを思い出しショックを受けた。すぐ気づけなかったことに。老化なのか。2017/10/21
まさきち
110
発作を伴う難病に苛まれる巧とその一人息子の佑司。彼らのもとに自ら残した言葉通り、亡くなった妻で母親の澪が雨の季節と共に舞い戻ってきた。そして6週間を共に過ごし、雨の季節と共に去っていく。この展開自体はよくあるものの、3人と近所のノンブル先生、そして彼の飼い犬・プーが紡ぎ出す時や空気が本当に心地よい。そして最後の種明かしの後、題名の意味が腑に落ちたときに心を鷲掴みにされ、またお気に入りの一冊が見つかったと思いながらの読了です。2022/09/26
カメ吉
100
ずいぶん前に映画で観ました。原作は初読みですが少し雰囲気は違いましたが切ないのは同じ印象でした。時空を超える恋愛で21歳の澪が事故に遭い8年後の夫・巧と息子の元にタイムスリップして自分の運命を知り夫と息子と2度目の別れをするのは残酷なモノにも思えました。そして事故後の21歳の自分に戻り7年後の自分の運命を知ってなお巧と結ばれる道を選ぶ澪に感動してしまいます。少し不器用過ぎる2人のあまりにピュアな恋愛過程にも感動でした。映画よりシンプルな内容でしたが良かったです。でも、竹内結子さんの映画も良かったし…残念。2020/11/14