小学館文庫<br> どん底―部落差別自作自演事件

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小学館文庫
どん底―部落差別自作自演事件

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  • サイズ 文庫判/ページ数 473p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784094061789
  • NDC分類 361.86
  • Cコード C0195

出版社内容情報

前代未聞の部落差別事件の犯人に迫る

03年12月から09年1月まで、被差別部落出身の福岡県立花町嘱託職員・山岡一郎(仮名)に対し、44通もの差別ハガキが送りつけられた。山岡と部落解放同盟は犯人特定と人権啓発のために行政や警察を巻き込んで運動を展開していったが、09年7月に逮捕された犯人は、被害者であるはずの山岡一郎自身だった。
5年半もの間、山岡は悲劇のヒーローを完全に演じきった。被害者として集会の壇上で涙ながらに差別撲滅と事件解決を訴え、自らハガキの筆跡や文面をパソコンを駆使して詳細に考察し、犯人像を推測していた。関係者は誰も彼の犯行を見抜くことができなかった。
被差別部落出身で解放運動にたずさわる者が、自らを差別的言辞で中傷し、関係者を翻弄したこの事件は、水平社創設以来の部落解放運動を窮地に陥れた。06年の大阪「飛鳥会」事件で痛手を負っていた部落解放同盟は、この自作自演事件で大打撃を被ることになった。
なぜ山岡はハガキを出さざるを得なかったのか--現代の部落差別の構造と山岡の正体に鋭く迫りながら、部落解放同盟が”身内”を追及する前代未聞の糾弾のゆくえを追う。
作家・桐野夏生氏による解説を収録。

【編集担当からのおすすめ情報】
著者は事件の舞台となった被差別部落に何度も通い、100人近い関係者から話を聞いて歩きました。根気強い取材から見えてきた犯人・山岡の人物像や、今も残る部落差別の実態は衝撃的です。部落解放の父と呼ばれる松本治一郎を描いた『水平記』著者だからこそ書くことができた”問題作”をご堪能ください。

内容説明

二〇〇三年十二月から約五年間にわたって、被差別部落出身の福岡県立花町嘱託職員・山岡一郎(仮名)に対し、44通もの差別ハガキが送りつけられた。山岡と部落解放同盟は犯人特定と人権啓発のために行政や警察を巻き込んで運動を展開していったが、〇九年七月に逮捕された犯人は、被害者であるはずの山岡一郎自身だった。なぜ山岡は自らに宛てて差別ハガキを出さざるを得なかったのか。現代の部落差別の構造と山岡の正体に鋭く迫りながら、部落解放同盟が“身内”を追及する前代未聞の糾弾のゆくえを追う。

目次

魔物の誕生
最初の出来事
解放運動家とはなにか
悲劇のヒーロー
一家総出のキャンペーン
自演の終わり
自白は二度おこなわれる
糾弾の果て

著者等紹介

高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958年宮崎県高千穂町生まれ。99年、『火花 北条民雄の生涯』で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ろくせい@やまもとかねよし

168
遣り場のない気持ちが胸を締めつけた。九州の部落解放活動内部で起こった予想外の自作自演部落差別事件のレポート。差別の根源となった行政制度成立から、明治の民主化で無常にも副次産物となった差別の復古と定着、そしてその解放に果敢に挑む活動の歴史を描写しながら、この理解不能な事件の動機に迫る。理不尽な社会に挑戦する大きな目的に、埋もれた足元活動者が自身を脅迫し被害者を装う様子が生々しく記される。二つの印象が。一つは、これがたった10年前の事件であること。もう一つは、どのような社会でも利他性に希薄な人があることを。 2020/11/17

リキヨシオ

26
どうして部落出身者自身が自作自演の差別行為を行ったのか…という実際に起きた事件を追ったノンフィクション。福岡県立花町の嘱託職員で被差別部落出身の男性に差別ハガキが送られる。5年にわたった44通の差別ハガキ。部落解放同盟は犯人の特定と人権啓発を訴え…町内だけでなく福岡県を騒がせた事件…しかし警察に犯人として逮捕されたのは被害者だった嘱託職員だった。江戸時代に完成された身分制度…明治4年の解放令により身分が平民となった事により発生した部落差別が現在まで影響を残している…事件と同時に部落差別の歴史も述べられる。2015/06/17

ミエル

13
理不尽な謂れなき差別に翻弄される人生にはどれだけの苦労とかなしみがあるのか想像がつかない。ただ、それを逆手に取る行動は許されるものではない。なんとも後味と読後感の悪い現実がやるせない。2016/08/04

万谷 祭(よろずやまつり)

8
部落に生まれ、部落に住み、部落解放運動に携わる男が、自分自身や周囲の人間に差別ハガキを出し続けたという不可解で悪質な事件。大切な事を言わないではぐらかし続ける男の姿にはイライラしたし、彼を信じて支えた家族や周囲の痛みは計り知れない。 犯人の山岡(仮名)は小悪党だが、差別を利用し、法律では裁ききれない悪事を働いた事を考えると大悪党よりも始末が悪い。 山岡の事件の前に、教師に差別ハガキが届き転勤に追いやられた事件があったが、教師を追い詰めた妻や上司は犯人以上に悪質ではないだろうか。2017/10/09

Ikuto Nagura

8
こんな事件が21世紀にもなって起きている事実を知り、部落差別の根の深さに悲しくなる。面白半分に部落を揶揄する「差別された側が自殺にまで追いつめられるという悲惨を想像すらできない、虚ろな人びと」の軽さと、生活のために部落差別を利用せざるを得ない山岡一郎のどん底。その血から逃げたくとも逃げられず、社会から婚姻や就労の差別を受け、同じ境遇の者たちからは、出自を誇れ・差別と闘えと糾弾される袋小路。水平社以来の理念で活動する組坂幸喜氏らの熱き思いも、人の世に熱を伝えられないどん底の袋小路に入ったようで虚しく思える。2015/06/23

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