出版社内容情報
異端経営者はなぜ生まれたのか
今から一世紀前。韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族は、豚の糞尿と密造酒の臭いが充満する佐賀・鳥栖駅前の朝鮮部落に、一人の異端児を産み落とした。
ノンフィクション作家・佐野眞一が、全4回の本人インタビューや、ルーツである朝鮮半島の現地取材によって、うさんくさく、いかがわしく、ずる狡く……時代をひっかけ回し続ける男の正体に迫る。
在日三世として生をうけ、泥水をすするような「貧しさ」を体験した孫正義氏はいかにして身を起こしたのか。そして事あるごとに民族差別を受けてきたにも関わらず、なぜ国を愛するようになったのか。そしてなぜ東日本大震災以降、「脱原発」に固執し、成功者となったいま、再び全米の通信業界に喧嘩を売りにいこうとするのか――。飽くなき「経営」の原点が本書で明らかになる。
文庫版では、本誌取材チームの一人であるノンフィクションライター・安田浩一氏の解説を収録。「取材舞台裏」と「佐野眞一論」が綴られる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
29
孫正義さんに興味があったので読みました。当然知らない話ばかりなので面白かったですしバイタリティーの原点をうかがい知れたような気になりました。ただ何冊か読んだ結果、私にとって著者は興味深い題材ながら合わない文章を書く人だと感じました。2022/07/08
あらあらら
23
今の日本を救えるのはこの人なのかも。と思える行動力は親譲りのようだ。それにしても、自分の作品を作品中で自画自賛するのは初めて見た。読み終えて、孫も著者も好きになれないのはそのせいか2016/02/16
おくりゆう
19
表面的な立志伝に留まらない、ルーツ等を丹念に辿る行動力と聞き出す力、と、これがまさに凄まじい取材力というか、ノンフィクション、ドキュメンタリーの醍醐味を味わうことが出来ました。これまで孫氏には正直あまり興味がありませんでしたが、興味深い人物だな、と今更ながら思いました。2016/12/29
ブラックジャケット
17
読むまで「あんぽん」の意味が判らずにいた。孫正義の日本名安本の音読みだ。アンポンタンを連想する。在日朝鮮人三世として、日本人同級生からアンポンと蔑称されたのだろう。孫の事業欲の原点が在日の差別との闘いなのだろう。祖父母の時代から、九州佐賀の朝鮮人部落に押し込まれ、雨が降れば泥沼、養豚と闇焼酎作りで糊口を凌ぐ。父親は商才に恵まれ、サラ金とパチンコ屋で成功して、泥の生家から抜け出す。正義は父親の順風を受け、アメリカ留学へ。以後の貪欲さは類を見ない。巨大企業グループへ邁進。エネルギーの元を見事にあぶり出した。 2021/09/07
Ikuto Nagura
10
『血と骨』の金俊平をはじめ、梁石日の小説に登場する在日朝鮮人が放つ瘴気には、読む者を圧倒する活力と人間の臭いがある。それと同じ活力と臭いが、本書の孫正義とその一族には漲っていた。そんなものが本当に孫にあるのかといったら、恐らく佐野眞一が勝手に創り出したものなんだろう。だけど、事業拡大への意欲や自信、父への孝行としてダイエーホークスを買収したり、震災復興のために100億円の義援金を出したりする行動からは、壮大な梁石日キャラを感じてしまう。佐野の偏執は批判されもするが、人間臭いノンフィクションが私は大好きだ。2016/01/21