物語の海、揺れる島

物語の海、揺れる島

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  • サイズ B6判/ページ数 229p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784093872058
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

AV・オウム・売春・沖縄・薬害エイズ…。時代を画する事件に関わり、メディアに翻弄された人々の心の漂流点は?。抜群の取材力で、発表直前から高い評価を集めた20世紀末ニッポン・ルポルタージュ集。

 「自分探し」「自己実現」「心の時代」??。「生きること」は、いつからこんな言葉をなぞることにすり変わったのか。耳障りのよい「情報」を鵜呑みにして生きる私たちは、もしかしたら癒しがたい<情報依存症>に侵されているのではないのか。 本書は、実力派の新人ノンフィクション作家として注目を集めはじめた著者が、風俗業界を皮切りに、大災害に見舞われた奥尻・神戸、オウム真理教事件・エイズ薬害運動の中心地・東京、少女暴行事件と基地問題に揺れた沖縄など全国を歩き回り、メディアのつくり出す「物語」がいかに感傷的か、現実がいかにクールか、人がいかに情報に無防備かを、やわらかいが確かな筆致で描き出します。 それだけでなく、事件のルポをとおして、自分らしさの本当の意味や、人がただ生きることの価値をもう一度見出そうとする視線もすがすがしい好著です。 荒木経惟氏のモデルとして写真家とともに過ごした濃密なひと時を描く「モデルの時間」、岡崎京子氏の代表作『Pink』を引用しながら、メディアの語る<幸福のカタチ>におびえオウム真理教へと傾斜していった女性信者たちを描く「フェミニズムは何も答えてくれなかった」など、鋭いが偏りのない感性のひらめく文章は読

内容説明

20世紀末ニッポン・ルポ。抜群の取材力としなやかな感性で描く、AV・オウム・売春・フェミニズム・沖縄・神戸・HIV+荒木経惟との「モデルの時間」。

目次

光の町のAV女優
風の中の雌鶏
フェミニズムは何も答えてくれなかった―オウムの女性信者たち
「私」の漂う空間
モデルの時間―荒木経惟と過ごした冬の日の午後
向こうの島の出来事
ひめゆりの物語は、もういらない
過ぎ去った「運動の季節」―沖縄県民投票
作られた伝説―神戸レイプ多発報道の背景
「市民」という幻想―エイズ薬害運動の気分
旅人の住処

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

seichan

6
まず前半では、1997年当時のAV撮影風景や人妻風俗嬢、オウム女性信者たちの取材、筆者がアラーキーに撮られる実録ルポなどを通して、Hanakoな華やぎも消えたあとの自己実現をもとめて彷徨う女性像をとらえている。後半は沖縄二世の立ち位置から書いた沖縄の基地反対運動、既成党派に回収される薬害エイズ問題、阪神大震災後の避難所でのレイプ多発というデマの出所などを取材しているが、そういう社会問題に「乗じて」自己実現しようとする女性たちの姿への冷静な視線がいい感じだと思った。2016/11/05

こにいせ

4
14年前の本ではあるが、本著で語られている問題意識は全く現在でも古くなっていない。オウム・阪神大震災・薬害エイズ・AV女優…すべてに共通するものは「こうであって欲しい自分の中の記憶」によって、現実がすり替わっていく様である。そのことがいいか/悪いかという二元論に収斂させていくのではなく、その事象にあって感じた質感をそのまま書くあたりに、著者の書き手としての誠実さが垣間見える。特に阪神大震災時の、レイプ多発報道に関する取材顛末には恐れ入った。真っ当なジャーナリストによる真っ当なルポタージュ。2011/04/02

かみーゆ

3
鎌倉芳太郎の評伝が素晴らしかったので、古本屋で見つけて買ってみました。面白かった。目の付け所がユニークですよね。アラーキーに撮られてみるとかスゴいな。沖縄のとこで藤木勇人さん出てきてました。黙認耕作地、観てみたいですね。ちむどんどんとかもう出なくていいからさ。震災後の被災地でのレイプの話とか、今なら自称フェミニンな方々から超叩かれそう。過度な誇張は真実とかけ離れてしまうとは思うけどね。南京大虐殺しかりさ。それに踊らされる人たちがいないと熱狂は生まれないしムーブメントにはならないというのはわかるんだけども。2022/07/04

kama-chan

1
女性・沖縄二世の立場から社会の視点を描いたルポ。震災や津波、沖縄問題、そしてオウム。1997年発刊のこの本が2011年現在においてもそのまま通用しており、社会の変化のなさに驚くよりも、普遍的な問題点を取り上げた著者の着眼点に目を向けるべきだろう。取り上げる問題点の語り口に偏りを感じさせないところに好感が持てた。2011/11/27

ラブミーテンダー

1
かなり昔の本ですが、内容に興味があり呼んで見ました。前半はまぁいいとして、後半は非常に面白かった。しかし、現代は何を信じればいいのか、わからない時代です。2010/05/24

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