内容説明
自在な諧謔とユーモア軽みの中の重い手応え時代を映す最新詩集。
目次
耳・老世紀界隈で(秋夜算数;劇場の座席;次世紀の座席 ほか)
九十四歳の不仕合せ(きんさん、ぎんさんの弟;出席・欠席;老年チエ熱 ほか)
サハリンの釣り(徒競走一景;天からの手紙;戯れに喜寿 ほか)
著者等紹介
伊藤信吉[イトウシンキチ]
1906年(明治39)11月群馬県前橋生まれ。萩原朔太郎、室生犀星に師事。一時、プロレタリア文学運動に参加、やがて離脱。詩のほかに詩人論、作家論を発表。『萩原朔太郎・浪漫的に』『同・虚無的に』で読売文学賞。詩集『望郷蠻歌・風や天』で芸術選奨文部大臣賞。『監獄裏の詩人たち』で読売文学賞。1996年から群馬県立土屋文明記念文学館館長
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
54
伊藤信吉最後の詩集。95歳とは思えないほど、諧謔やアイロニーを駆使して、現代社会に対して抵抗してみせる。耳が遠いことを書く作品のあとに、盗聴器の詩を並べ、二・二六事件の記憶や雰囲気を書き、現代の危うさを警告する。敬老乗車証の期限日限りに、無料制度廃止が狙われないか、福祉制度の弱さも指摘する。戦前プロレタリア文学にも関わった詩人は、約1か月を残して、期限切れの日を見ることはなかった。「もういっぺん喜寿あたりへ戻ろうかな、え。」のフレーズには驚く。88歳に戻りたいとは、とてもじゃないが我々の発想外だ。2021/03/17
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