めぐりあう時間たち―三人のダロウェイ夫人

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  • サイズ B6判/ページ数 285p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784087733792
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

人生は謎。時を超えてめぐりあう三人のダロウェイ夫人。六月のある美しい朝。三人の女の特別の一日が始まる…ヴァージニア―ロンドン郊外。1923年。文学史上の傑作『ダロウェイ夫人』を書き始めようとする…ローラー―ロサンジェルス。1949年。『ダロウェイ夫人』を愛読する主婦。夫の誕生パーティを計画し、息子とケーキを作り始める…クラリッサ―ニューヨーク。20世紀の終わり。『ダロウェイ夫人』と同じ名ゆえに元恋人リチャードにミセス・ダロウェイと呼ばれる編集者。文学賞を取った彼のためにパーティを開こうと、花を買いに行く…異なる時代を生きる三人の「時間」はいつしか運命的に絡み合い、奔流のように予想もつかぬ結末へ…。ピュリッツァ賞&PEN/フォークナー賞受賞。本年度アカデミー賞受賞、映画「めぐりあう時間たち」原作。

著者等紹介

カニンガム,マイケル[カニンガム,マイケル][Cunningham,Michael]
現代アメリカの実力派作家。1952年、オハイオ州シンシナティに生まれ、パサデナで育つ。スタンフォード大学で英文学を専攻し、アイオワ大学で修士号を取得。『この世の果ての家』(90)、Flesh and Blood(95)、ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』に想を得た本書『めぐりあう時間たち』(98)は、すでに文学史上の傑作との評を得てピュリッツア賞とペン/フォークナー賞を受賞し、発表以来ベストセラーリスト1位を続けるミリオンセラーとなる。2002年映画化され話題を呼ぶ

高橋和久[タカハシカズヒサ]
1950年生。英文学専攻。東京大学文学部教授。京都大学文学部卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

34
入水自殺することを決めながら美しい悲劇の執筆を始めるウルフ夫人。息子とバースデーケーキを作るウルフ作品愛読者のローズ。元恋人と過ごした時に出来た溝について思考を巡らすクラリッサ。儘ならぬ日常からの逃避だとしてもそれが支えになるのは本当。妻への理解に乏しい上に最悪のタイミングでいけしゃあしゃあと自分勝手なことを宣う利己的な夫への苛立ちは女なら共感せざるを得ない。それでも心を浮き立たせる日々の営みがあるから過ごしていける。時代は変われども、女たちの営みは綿々と続いていける。それはとても美しいこと。2016/03/02

pulpo8

26
映画「めぐりあう時間たち」→「ダロウェイ夫人」(3回読了)→本作。あとがきの「ダロウェイ夫人の文体模写」に頷く。似てるなぁ、と思った。(訳者のお陰か)分かりやすく美しい文体に惚れた。純文学らしく目を引く展開はないが、時にハッとするような深遠な言葉に出会う。ローラが(子どもから逃れ)本を読むためにホテルを借りるシーンにドキドキした。挨拶に唇を合わせるのは日本人としてはやりすぎに感じて慌ててしまう。人間をじっと見つめて、ふうっと(嫌々ながら)吐き出すという風な話の進み方に“なにか厳粛な感じ”がするのだった。2016/07/06

柳瀬敬二

20
原書。ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を軸とした3人の女性の物語。同性愛的傾向を持つ彼女達は一見幸せそうに見えるが、心の中は崩壊寸前で死の誘惑に取り憑かれている。精神疾患への恐怖、家族に対する息苦しさ、介護相手への依存。必要としているものは三者三様だろうが、彼女達の中では何かが噛み合わない。後年、『波』を書いたウルフが川へその身を沈めたのには象徴的なものを感じずにはいられない。ダルドリー監督の映画版はニコール・キッドマンを始めとした役者達の演技が冴え渡っているので、そちらもオススメ。2016/08/14

くさてる

17
ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」を取り巻く三つの時代の三人の女性たちの物語。プロローグからぐいと引き込まれ、次々と移り変わる三人の女性、ひとりひとりの生活の描写に読むのを途中で止められなかった。私はウルフはほとんど未読で、彼女についても一般的な知識しか無かった。なのに、この小説の彼女、彼女と著書を通じて繋がるローラ、クラリッサをとても身近に感じた。最後までの構成と、文章も素晴らしい。ウルフの「ダロウェイ夫人」も読もうと思う。良かったです。2014/07/10

gorgeanalogue

9
ウルフ作品のさまざまな要素の配置の周到さなど、なかなか読ませる。「死」の影の執拗な「幽霊性」はウルフ作品とも共通しているものだし、時々ハッとするようなフレーズにも出合う。ただし「文学上の「古典」に「寄生」し、その続編もしくは前史という体裁をとった」(訳者あとがき)「ポストモダン小説」であること(原書1998年刊)のあざとさも感じられるし、結局のところウルフ作品を超えることはないという感想に至ってしまう。エピグラムに掲げられたウルフの日記の一部「人物たちの背後の美しい洞窟」がかえって輝きを増す。映画は?2021/09/13

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