出版社内容情報
50歳の情熱がひらく、あらたな人生の扉。
東京の下町で暮らす主婦、能勢志乃子。50歳の誕生日を迎えたある日、偶然手に入れた骨董品から、思いがけない縁がつながる。予期せぬ出会いと友情が引き寄せる、人生の喜び。生の希望にみちた長編小説。
内容説明
東京の下町で暮らす平凡な主婦、能勢志乃子。50歳の誕生日に、近所の古い喫茶店で、年代ものの文机と茶碗と手文庫を貰い受ける。後日、その茶碗の驚くべき価値が判明して、志乃子は骨董の世界に足を踏み入れていく。予期せぬ出会いと友情が引き寄せる、新たな人生の喜び―生の希望に満ちた、傑作長編小説。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年、兵庫県神戸市生まれ。広告代理店勤務を経て、執筆活動へ。1977年「泥の河」で太宰治賞を、翌年「螢川」で芥川賞を受賞。ひたむきに生きる人間の姿を、鮮やかな人物描写と洞察で描き出す。『優駿』(吉川英治文学賞)『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)など著書多数。2010年秋、紫綬褒章受章。1996年より、芥川賞選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳳
119
上巻読了しました。まだ、静かな展開ながら、50歳を向かえた志乃子さんの人生が動き出す。これが「五十の坂」私も覚えて措こう。「心は巧みなる画師の如し」良いなぁ。話題が沢山、どう繋がり、どう成るのか。楽しみです。下巻にいきます。2016/05/06
chikara
113
「心は巧みなる画師の如し」この言葉は胸にすとんと入った。125年の歳月水に打たれたりんご牛は下巻にて、どのような解釈を与えてくれるのだろう。さて、下巻へ。2014/09/12
里季
79
主人公志乃子は1957年生まれで私と同じ歳。だから親近感があって面白く読んだ。出て来る人には誰も悪い人がいなくて、誰も死なずに血も出ない。ああ、久しぶりにほっとする。ひょんなことから志乃子が古い値打ちのある茶碗を手に入れてから、次々と平凡だった彼女の人生が動き始める。先日読んだ「冬の旅」が、悪い方へ悪い方へと運命が転がり落ちるのとは逆に、何も起きなかった志乃子の人生がほぐれて新しい出会いも生まれ、行動範囲も広がり、積極的になっていくようだ。下巻が楽しみである。2014/01/09
美雀(みすず)
68
50代の女性が主役の物語はこんなにも深いのか。自分の心に響きます。体の不調を感じる場面とか健康管理は本当に現実的です。読み進めるのに突き刺さるような所も多々あるけど…。全体的には続きが気になって下巻への期待が高まります。2014/02/16
藤枝梅安
64
真面目だけがとりえの平凡な主婦・志乃子が、近所の古い喫茶店で骨董とも呼べないような文机と茶碗を貰って帰宅する。茶碗の思いがけない価値を知らされ驚く志乃子。更に文机の中から古い手紙が見つかる。忘れ去られた物たちがそのものにまつわる歴史を語り始めるように、それに関わった人々の記憶と想いを蘇らせる。静かな語り口で人間の生と死を対比させながら、筆者は人間の欲と業に寄り添うように物語を進めていく。途中、古美術や音楽に関する記述も多く、ジャズのスタンダードやブラームスの4番が紹介される。(コメントに続く)2012/12/22