出版社内容情報
ロス在住の叔母の訃報。甥の弦矢が駆けつけると、27年前に死んだという叔母の娘が、実は当時からずっと行方不明なのだと知らされる。生き別れた母子の運命を追い、人間の「幸福」を問う傑作長編。
宮本 輝[ミヤモトテル]
内容説明
ロサンゼルス在住の叔母の、突然の訃報。弦矢は謎を追い始める―。叔母・菊枝の死を知り、甥の弦矢が渡米すると、巨額な遺産の相続人として彼が指名されていた。また、幼くして病死したはずの叔母の娘が、実は死んだのではなく、ずっと行方不明なのだと知らされる。なぜ叔母はそのことを黙っていたのか。娘はどこにいるのか。
著者等紹介
宮本輝[ミヤモトテル]
1947年兵庫県生まれ。77年「泥の河」で太宰治賞、78年「螢川」で芥川賞、87年『優駿』で吉川英治文学賞を受賞。2004年『約束の冬』で芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、09年『骸骨ビルの庭』で司馬遼太郎賞を受賞。10年秋、紫綬褒章受章。96年から芥川賞選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
宮本輝は数十年にわたってコンスタントに読んでいる作家の一人です。本作はミステリ色の強い長編でしたが、400P弱一気読みしました。この物語は、強い母の愛が為せる業でしょうか?アメリカの異常性愛はそんなにも根が深いものなのでしょうか?以前話題になったジョンベネ殺害事件も似たような真相かも知れません。それにしてもキクエ・オルコットの絶品スープを飲んでみたいなぁ!2016/12/26
じいじ
150
或る日、42億円の遺産を相続していただきたい、と知らせが届いたら…。主人公の青年・弦矢にこんな夢のような話が舞い込むところから始まる。舞台はロサンゼルスから行く太平洋を前にした静かなリゾート地の花咲き乱れる邸宅。回顧しながら静謐に流れていく物語が心地よい。弦矢にかかわるアメリカ人たちの優しさや明るさが清々しい。美しい草花、夕闇の波音などファンタジーな描写の中で繰り広げられるミステリアスな展開、娘を手放す母の心底に潜む辛さに胸が締め付けられます。宮本輝の持ち味が存分に発揮された感動作です。2017/02/13
雪風のねこ@(=´ω`=)
148
初読。随分と読み易い文章で、風景や情景を想像するのが楽しい(スカンクの臭いって災害レベルなんだな)。弦弥の独り言(実際にやる人は居ないだろうが)は心情や情景描写に大きく寄与していると思う。菊枝はやはり旅が終わったら全て弦弥に話すつもりだったんだろうなと思う。特注した飾り台や、メリッサと同じ数だけのガーベラ鉢でもそう窺える。草花に想いを託すというのは(如何にも日本人らしい考え方である)、それ以外方法がなかったとはいえ辛かったろうが、幸せに育っているという確信があったからこそ、生きる寄す処となったのだろう。2017/10/14
いつでも母さん
125
じっくりと集中して読み込めなかったのが悔やまれる。前半は思考が散らかってしまい、(カタカナが多いし・・汗)何を言いたいのか?と読解力の無さに我ながら情けなくお手上げかと・・が、後半は菊枝おばの思いが切なくて、もし自分がキクエだったらと思うと凄いなと・・そして庭の草花をどんな思いで、どんな決意で、戒めで育てたのかと思うとじんわりと沁みてきた。『幸せ』ってなんだろうね?そんな事を思って読了した。そして、宮本作家、お願いだから流転の海を早く・・(やっぱり気持ちはそちらへ向いたのだった)2017/01/04
あすなろ
119
一説では、全米では毎年約百万人が行方不明となり、うち、85%が子供だ。そこから始まる宮本氏新刊。ネタバレになるので結論に近いことは書けない。しかし、どんな人間も、自分か何者かを知らなくてはなりません。父・母がどんな人間だったのか。それが不明のままでは、人間は依って立つ大切な何かを持たないまま生涯を終えなければなりません。ここであろう、宮本氏の力点は。そこに至るまでの回向を描く。新聞連載というところもあり、若干冗長ではあるとも言える箇所はあるが。しかし、後半の展開は宮本氏らしく叙情溢れた教訓が入って良い。2017/01/18