出版社内容情報
カフカの面白さを1冊に凝縮。新訳『変身(かわりみ)』を筆頭に、短編『お父さんは心配なんだよ』長編『訴訟』など、さらには彼の遺した書簡集や公文書も加え、その魅力を現代に伝える。(解説/多和田葉子)
内容説明
カフカの文学は、映像的であるという印象を与えながらも一つの映像に還元できないところに特色がある。『変身』のグレゴール・ザムザの姿も言語だけに可能なやり方で映像的なのであって、映像が先にあってそれを言語で説明しているわけではない。…読む度に違った映像が現れては消え、それが人によってそれぞれ違うところが面白いのである。この機会にぜひ新訳でカフカを再読して、頭の中の映画館を楽しんでほしい。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ] [Kafka,Franz]
1883.7.3‐1924.6.3。ユダヤ系のドイツ語作家。オーストリア=ハンガリー帝国の領邦ボヘミア王国(現在のチェコ)の首都プラハに生まれる。民間保険会社、のち労働者災害保険局に勤務の傍ら、小説を発表。生前の読者は限られていたが、第二次世界大戦後の実存主義ブーム中に再発見され、世界的名声を得る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
159
はぁ…駄目だ。もう…限界です。「訴訟」の途中まで読んだけど挫折。 まず「変身」の虫の描写のおぞましいことといったら。家族がある日巨大な虫になってしまったら…もう愛せないかもしれない。もう触れあえない、ことばも交わせない、でも養わなくてはいけない…介護小説?引きこもり小説? それでも「変身」はまだ読めた。「巣穴」が…辛すぎて…「訴訟」(審判 改題)は比較的面白かったので頑張りましたが世間も不穏ななかこれ以上読んでたら鬱になる!と完読を断念(´༎ຶ༎ຶ)誰か私にカフカの読み方を教えて。2020/03/28
KAZOO
123
久しぶりに、これぞ世界文学という作品集を読みました。このシリーズは13冊出ているそうですが最初はカフカでしかも多和田葉子さんがいくつかの短篇を訳されています。変身ということで「かわりみ」というふりがながあって、今までとはまったく別の作品を読んでいる気がしました。解説でこの作品を多和田さんは「介護」と言う観点から訳されているようです。また川島先生の訳の「訴訟」(むかしは「審判」という題名でした)もかなりむかし読んだイメージと異なる気がしました。カフカの新しい魅力を見つけ出したような気がします。2018/03/20
優希
94
変身、訴訟を含め、中短編や論文、書簡など盛り沢山でした。新訳なので読んだことのある変身や訴訟が新しい物語に感じました。訴訟は有名な審判というタイトル。他の短編も様々な模様や映像を見せ、映画のような雰囲気が楽しめます。また、カフカが書いた論文や書簡が読めるのは貴重だと思いました。1冊でカフカの魅力を味わえるお得感のある一冊です。2015/12/04
(C17H26O4)
91
正体不明、目的不明、理由不明などなど。明確に描かれていないことが多々あるにも拘らず、とても映像的であるという不思議な面白さ。否応なく想像力が働くけれど想像しきれなくて、半ば諦めて翻弄されながら読んだ。理不尽さには苛ついて、出口を求めて彷徨った。到達点が見えない不安と緊張が継続する中、答えは何なのか知りたい欲求に駆られる。正確なんてないだろうに。求めてしまうから苦しいのだけれど。どことなく感じるユーモアに救われる気もした。『巣穴』と小編が好み。2020/08/09
zirou1984
63
文庫でどどどんと800ページ。過負荷だね。収録作の大半は既読だけど、豊潤な語彙によって転生した「変身(かわりみ)」と実は被告人も相応にあかんたれだった「訴訟」という表題が変更された代表作2作はやはり抜群に良く、強迫神経症のモグラが可笑しい「巣穴」は初読ながらそれらと肩を並べるほどの出来。また世を忍ぶ仮の姿である公務員業務の公文書にもカフカ的世界がしっかりと刻印されており、書簡選ではこの人とは個人的に絶対親しくなりたくないと確信できるウザさが爆発しており矢鱈と面白いことになっている。解説解題も素晴らしい。2015/12/17