出版社内容情報
19世紀、万博前夜のバルセロナ。父親の突然死の真相を探る大学教授のダニエルは、ある幻の解剖書の存在に気づく。一方、町では連続猟奇殺人事件が起きていて……。スペイン・ミステリーの真骨頂!
ジョルディ・ヨブレギャット[ジョルディヨブレギャット]
宮崎 真紀[ミヤザキマキ]
内容説明
1888年バルセロナ。初の万博を控えたこの街で、若い女性が次々と惨殺される。一方、大学教授のダニエルは、亡き父が地下の下水道に隠したノートを発見。そこには、医師オムスの奇怪な記録と、幻の解剖書のことが書かれていた。謎めいた医学生パウの協力を得て、解剖書を探すダニエル。そのダニエルを脅かすオムスの影。やがて連続殺人事件の真相が明らかになる…。驚きと興奮のミステリー。
著者等紹介
ヨブレギャット,ジョルディ[ヨブレギャット,ジョルディ] [Llobregat,Jordi]
1971年生まれ。スペイン・バレンシア出身。地域整備プロジェクトに関わる会社を経営する傍ら、執筆活動を行う。文学グループ“赤いノート”に参加し、短編小説を発表。バルセロナ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
140
19世紀後半のバルセロナでの事件が16世紀の表題にもなっている解剖学者の書いた書物をめぐっての秘密などが鍵となり、かなりの面白さを味わえます。600ページですが1冊で読めていいと思います。先日読んだ竹書房の本は550ページくらいを2冊に分けていました。最近の集英社文庫は結構スペインの作家のミステリーが多く楽しんでいます。特に、カルロス・ルイス・サフォンの小説はやはり本が主題となっているものが多く楽しめます。次の翻訳を早く出してくれないですかね。2016/10/30
のぶ
71
とても面白い本だった。舞台は19世紀後半、万博開幕目前の活気のあるバルセロナの街の暗部。雰囲気は切り裂きジャックを描いた作品の、ロンドンに似ている。物語のモチーフとなっているのは解剖学。そんな状況で連続殺人が発生する。事件を調べる大学教授、ダニエル。それを追う新聞記者。捜査する警察等の描写で事件が多面的に描かれて、真相が徐々に浮かび上がってくる。作品全体が独特なムードに包まれていて、ミステリーの楽しみに色を添えている。解決に向けた終盤は明るく転調し後味は悪くない。良く出来た作品だと思う。2017/01/31
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
41
長かった。とにかく長かった。1888年万博をひかえたバルセロナで起こる若い女達の連続殺人事件。アクションに次ぐアクションでいつ命を落とすか、ヒヤヒヤしながらの捜査。形勢はずっと不利だったが、やがて少しずつ押し返していく。1月に行ったバルセロナでは、ホームレス達が皆巨大な犬を連れていて、夕方になると犬と一緒に道端で寝ていた。旧市街でその景色を見ると、何だか時をさかのぼった様な気持ちになった。この作品にも「黒い犬」という地獄の犬が出てくる。2017/02/27
seacalf
32
馬車が行き交う約130年前のバルセロナを舞台に繰り広げられるのは、おどろおどろしい奇っ怪な連続殺人事件。実在の解剖学者ヴェサリウスや万博を扱って、細工は流々、練りに練ったプロットには感心するし話の筋も悪くないのだけど、いかにも悪者然とした敵役達とソープオペラに似た展開に少々興が削がれる。とはいえ、終盤以降は一気に畳み掛けてくるので時間を忘れてページをめくる羽目になる。パウと文句屋の記者はそこそこ魅力的に描かれてるのに肝心のダニエルは今一つだよねとぶつくさ文句を言いつつも、明け方まで読んでしまった徹夜小説。2017/02/07
ほちょこ
25
万国博覧会を目前にした、混沌とした年代のスペイン。そこには貧困もあれば差別もあり、そしてその中から新たな時代の光を見いだすことに熱くなる人間があり、物語の点の数々が散らばり、やがて大きな塊となる。壮大なストーリーだなぁとは感じつつも、やや収まり切らずに最後にちゃちゃっとまとめた感が残った。でも、この時代、好きだなぁ。2017/04/26