出版社内容情報
ナチス占領下、14ヶ月の地下水道潜伏記
1943年、ナチス占領下のポーランド、ルヴフで、収容所送りを逃れ、地下水道に隠れたユダヤ人と彼らを助けたポーランド人がいた。14ヶ月の末、潜伏の結末は? 証言を元にした実話で映画化原作。
内容説明
1943年ポーランドの町ルヴフ。加速するホロコーストのもと、地下の下水道へと逃げこんだユダヤ人と、金銭と引き換えに彼らを匿うことになったポーランド人の男ソハ。下水道はまるで地獄のよう、悪臭と暗闇、死の恐怖と闘いながら、彼らは14か月を生きる。忍耐、葛藤、裏切り、絶望、そして希望―極限状況のなかで人間のもちうるさまざまな感情と行動を浮き彫りにした、迫真のノンフィクション。
著者等紹介
マーシャル,ロバート[マーシャル,ロバート][Marshall,Robert]
1952年オーストラリアのタスマニア生まれ。BBCの歴史と考古学番組のシニア・プロデューサーを務めた後に独立、多くのドキュメンタリー番組制作に携わる。ロンドン在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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♪mi★ki♪
24
下水道に潜伏してホロコースト から生き延びたユダヤ人と、それを助けたポーランド人配水管工ソハの物語。ノンフィクション故、ユダヤ人生き残りがいたからこそこうして本になっているということもドイツの敗戦も知った上で読んだわけだが、「ソハは何故ユダヤ人を助けようと思ったのか?」「終戦後のソハは?」が知りたくて読み進めた。狭く暗く汚物だらけの下水道の閉塞感、絶望感の中でソハの見せる優しさと度胸と素晴らしい頭のキレ。そして、最後の1行が…。さて、恒例の原作読書➡︎映画鑑賞せねば。2018/11/11
スー
19
25ポーランドの町ルヴフでホロコーストから逃れる為に下水道に逃げ込んだユダヤ人達その内の20名ほどが下水道労働者のソハにお金を払う代わりに助け14ヶ月生き延びた実話です。真っ暗で悪臭と湿気で満ちた悪環境に長期間居ると人はどうなるか?がよく分かります。この内半分近くが事故や病そして耐えきれずに下水道を出る選択をして亡くなっていきました。他の下水道に逃げたユダヤ人達は食べ物や飲み水が無くさ迷い下水に落ちたり絶望して自殺し下水道から出た者は待ち伏せていた兵士に殺される運命でした。家族を危険にさらしながらも守った2021/02/14
けんちゃん
19
インターネットラジオOTTAVAのプレゼンター、清水清さんのご紹介本。ホロコーストの嵐の中、地下の下水道に逃げ込んだユダヤ人と、金銭と引き換えに彼らの世話を請け負ったポーランド人のソハ。14ヶ月にわたる下水道内の生活、暗闇と、死と、ねずみとの戦い、何も信じられないような極限状態の中であやうくも保たれる連帯と信頼。自らも危険な綱渡りをしながら、献身的にユダヤ人たちを支えるソハを駆り立てたものは何だったのか。生存者たちから聞いた話、書き残された記録をもとに綴られたノンフィクション。ホロコーストの知らなかった→2012/10/26
つちのこ
11
舞台となったは旧ポーランド・ルヴフの町。ロシア軍によって解放されるまで、14ヵ月間にわたって絶悪な環境の下水道に隠れたユダヤ人の記録。最終的には10人が生き延びるが、その支援にはポーランド人ソハを中心とした人々の存在があったという。ナチによるユダヤ人虐待が進む中で、人道的見地により自らの危険を顧みることなく、ユダヤ人を匿ったり、逃亡の手助けをした人々は他にも多くいる。本書に限らず、様々な状況の中でのこうした記録が風化することなく、さらに多く出てくることを望みたい。 2021/07/15
SAT(M)
11
ナチスドイツに迫害されたユダヤ人が、追われるがままに下水道に逃げ込み、そこで(1年以上も!)集団生活をしつつ生き残るという、当事者の書き残したものやインタビューをもとに書かれたノンフィクション。作中には終始、下水の悪臭や湿気、一寸先も見えない暗闇や水の流れる爆音、そして何より閉塞感が漂っています。仲間内のいがみ合いや、ポーランド人協力者への信頼が時々不信に変わる瞬間など、彼らの負の心理が直接ヒトラーには向かず、近しい人に向けられるあたり、極限状態でのリアリズムなんでしょう。そしてラストが…(絶句)2019/10/06