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集英社文庫
ナイロビの蜂〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 366p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087604511
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

美しい若妻テッサは、死の直前まで、熱心に救援活動をしていた。ジャスティンは生前の行動を克明に追うことから事件の全貌を解明しようと決意する。それはテッサの問題に、彼自身が向き合うことだった―第三世界に対する医薬品供与の恐るべき実態、官僚と多国籍企業の癒着、それを告発するNGO。いったい世界はどうなっているのか。冒険小説の巨匠ル・カレの到達点ともいうべき最高傑作。

著者等紹介

ル・カレ,ジョン[ルカレ,ジョン][Le Carr´e,John]
1931年イギリス生まれ。スイスのベルン大学、オックスフォード大学で学び、イートン校で教鞭を執った後、外務省職員としてドイツに5年間勤務。64年に退職し、執筆活動に専念。東西冷戦下の諜報活動をリアルに描いた『寒い国から帰ってきたスパイ』で数々の賞を受賞し、一躍有名になる。スマイリー3部作のひとつ『スクールボーイ閣下』で英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー、83年にはアメリカ探偵作家クラブ賞グランド・マスターを受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

338
読む前の想像とは随分違ったものだった。上巻の冒頭でジャスティン(主人公)は妻のテッサの死を知らされる。そこから紆余曲折を経てではあるものの、ジャスティンの追憶行が始まる。それは、最初は妻の死の真相を知るためであっただろう。また、その過程で多国籍製薬会社の地球規模での謀略を知り、自らを危地にさらすことにもなった。そして、最後にたどり着いたのは、妻テッサの生きた証を追体験することであり、失われた過去を妻の幻と共に生きることであった。だから、物語の結末はあれでよかったのだろう。彼の最後の到達点だったのだから。2016/08/06

みも

217
唐突に訪れる結末。それはあたかもニュースキャスターのリーディングのように、感情を排した無機質で恬淡な文体で語られる。一方、ラストに描かれるジャスティンの内面の揺らぎは、ある種の陽気な錯乱とでも言おうか…どうにも痛切で苦しかった。妻の為にフリージアを愛でた「誠実な園芸家」は、妻の設定したパスワードによりその強い愛を知る。確かに本著は愛の軌跡…しかも極上の純愛。スパイ小説でもあり示唆や比喩が多用され、台詞の表層の裏側にある真意を汲み取る能力が求められ、誰もが楽しめる作品とは言い難いが挑戦する価値は十分にある。2021/01/26

Tetchy

118
これまで数々の世界の裏側をつぶさに描いてきたル・カレだけにアフリカが抱える問題についてもそのペンは痛烈だ。もし本書をコロナウイルスのワクチン接種前に読んでいたら、果たして私は接種しただろうか?そう思わせるくらい、本書での新薬に纏わる利益競争、勢力争いは凄まじい。人命を救うために新薬の開発に精を出す製薬会社が自分たちの利益と保身のために逆にその命を奪おうとする。あまりに愚かすぎる行為、考えだ。アフリカという第三世界に蔓延る巨大企業の毒牙について詳らかに描いた作者の正義を感じられたのは最後救われた思いがした。2024/03/03

藤月はな(灯れ松明の火)

69
勧善懲悪なんて都合のいい状況しか見ない、聞かないようにして犠牲を強いている私達が息をしている世界ではおとぎ話にしか過ぎない。でもクエイルが悔いてテッサの軌跡をなぞり、世に投じた石は少しずつ、波紋を広げて世界に静かに問いかけていくのだろう。これはテッサという「弱き者を護るための正義」というキリスト教的愛の体現者に殉じた者の軌跡でもあったのだ。個人的に夫への不信感と庭仲間のクエイルへの友情の板挟みになるジュリアが可哀想だったが、あの一矢報いる状況には少し、胸のモヤモヤが晴れました。2016/09/27

goro@80.7

66
貧困の国を食い物にする大企業とそれを容認し甘い汁を得ようとする官僚。犠牲となった若く美しい妻テッサの足跡を一人辿るジャスティン。彼を遠ざけたのはテッサの愛の形だったのだろうけど、ジャスティンもまたテッサと同じ想いや義憤に駆られてしまう。何もしなかった己に恥じるようだ。読み通すのに難儀しましたがようやくたどり着けた。利益の神、強国の論理に圧し潰された二人の悲劇。2018/03/15

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