出版社内容情報
33歳の夏、いつだって感動的だった夕暮れが、突然、美しさを失った。もう私は若くない…。外国人ジャーナリストとの情事にのめりこんでゆく女の内面を鮮やかに写す話題作。第2回すばる文学賞受賞作。(解説・清水 徹)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
514
いわずとしれた、森瑤子さんの衝撃的なデビュー作。なんど違う版で手に入れ、読み返したことだろう。今回は『森瑤子の帽子』を読むにあたり、表題作のみ。今回初めて気がついた。主人公とその愛人は、たったの8回しか会ってないのだな。その間に生まれた葛藤、相手を想う気持ち、失われていく若さへの焦り、空虚に満ちた結婚生活。改めて森さんは、小説を書くべきして生まれた方なんだなぁと。そして「始まった恋は、必ず終わりに向かって走り出している」を身を以て教えてくれた作家さんでもある。2019/07/20
じいじ
103
5作目の森瑤子だが、デビュー作の今作が私には一番フィットしました。句読点が多い文体は、テンポが良く読み易く気に入りました。表題作は、111頁の中編ですが、中身はずっしりと充実感があります。主人公・ヨーコは、妻としては手に余り一考の余地がありますが、友人としてお付き合いするのには恰好な女性です。官能小説を書く女流作家では、よく読んでいる花房観音と較べると、気取りがない表現に斬新さを感じます。【情事】だけで大満足、腹一杯になりました。2019/07/24
こばまり
48
寒々とした美しい情景が印象的。翻訳小説のような趣でうっとりと没入。2編の主人公はいずれも30代だが、パートナーとの生活にすっかり倦怠感を抱いている。昔の日本人は老成するのが早い。 2023/01/23
いちろく
21
紹介していただいた本。夫とセックスレスの主人公ヨーコが、30を過ぎ若さの喪失を自覚しつつも、性欲を満たす為に男を漁った物語。私の男性目線だと、夫を騙し、独身だと相手に言い寄り、結果的に傷つけるヨーコは悪女であり自分に都合のよい女。一方で、ヨーコを満たせない夫も悪いという意見もあるのだろうな、きっと。ただ、不倫が発覚したら全てが終わるのは自明であり、薄氷の上を進むヨーコの未来に明るさは見えなかった。1978年すばる文学賞受賞作。2023/07/23
団塊シニア
21
今は亡き森瑶子の最初の作品。老いる不安、性への渇望、見事に描かれてます。まるで海外の作品のような感じがします。2012/06/25