内容説明
私はその閉ざされた扉のひとつひとつをノックした。私自身の眼差しで―。小説『ディングルの入江』の舞台となる冬のアイルランドを訪ねた写真家の眼は、荒涼として夜のように暗い地の、固く凍てついた扉をひらいてゆく。それは自らの心の軌跡をたどる、祈りと癒しの旅路。静謐さに満ちた72葉の写真に、小説からの抜粋をちりばめて、言葉と風景とが融合し、響きあう「見る」小説。オールカラー版。
著者等紹介
藤原新也[フジワラシンヤ]
1944年、福岡県門司港生まれ。東京芸術大学油絵科中退後、アジア各地を放浪
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
103
冬のアイルランドの写真を中心に構成された文庫。ところどころに著者の小説『ディングルの入江』の一部が挿入される。この小説を読んでいなくても、楽しめた。セピア色を基調にした写真が本当に美しい。眺めていると、どういうわけか自分の過去のことを思い出した。アイルランドの写真というより、日本の昔の写真のように感じることもあった。文章には祈りのようなものが感じられる。荒涼としたアイルランドの風景に溶け込むことで、私の重たい心が少しずつ晴れていくところが感動的だ。2018/05/13
SaTa
5
同氏著『ディングルの入江』(未読)から抜粋された小説ともに、アイルランド・主にディングル半島の写真が掲載されています。荒涼とした寒々しさがガンガン伝わってくる中で、人々の笑顔や太陽が負けじと光を放っている様がアイルランドそのものだなと感じました。厳しさと陽気さの共存。写真集として楽しんでみました。2014/05/21
RYOyan
2
いつかアイルランドを旅してみたいな。冬の重々しい風景の中に一筋の光が射し込んで、深い祈りに包まれた光景を見せてくれます。2012/06/04
xiaohori
2
光や風の感覚的な表現が文章としてちょっと難しかったかな 彼の最後はあんな感じで良いのかと思う。2012/09/20
むし
2
写真と文章の雰囲気がすごくいい。アイルランドに行ってみたくなった2009/10/25