内容説明
時代小説とは何か?司馬遼太郎、藤沢周平ら多くの作家が活躍し、名作が書かれた昭和。作品が舞台とする江戸時代。高度経済成長期の「会社」生活に一喜一憂した昭和のサラリーマン達が自らを仮託した下級武士達と、経済成長なきユートピアとしての「藩」。それぞれの時代と社会を詳細に読み解き、日本人にとって時代小説が持つ意味をわかりやすく語る。おじさんも歴女も目からウロコが落ちる必読書。
目次
第1章 「小僧」は神様を信じない―山本周五郎
第2章 吉川英治の『宮本武蔵』と「修養主義」
第3章 「戦後」を問いつづけた司馬遼太郎
第4章 「海坂藩」の原風景―藤沢周平
第5章 山田風太郎―その教養と奇想
第6章 「侠客」その孤影と集団の両像―長谷川伸、村上元三など
第7章 「おじさん」はなぜ時代小説が好きか―森鴎外ほか
著者等紹介
関川夏央[セキカワナツオ]
1949年新潟県生まれ。上智大学中退。85年『海峡を越えたホームラン』で第7回講談社ノンフィクション賞、98年『「坊っちゃん」の時代』で第2回手塚治虫文化賞、2001年「人間と時代を捉えた幅広い創作活動」により第4回司馬遼太郎賞、03年『昭和が明るかった頃』で第19回講談社エッセイ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
139
題名で損をして読者層を限定しまう可能性があります。私はじじいですがこの内容は万人向きに書かれているまっとうな時代小説批評集です。作家ごとにまとめてその作品などをサラリーマン生活にかぶせながら紹介してくれています。佐伯さんばかりでなく(私も大好きですが)、ここに書かれている作品も読んでもらいたいと思っています。2016/09/10
けやき
39
題名からもっと軽い読み物かと思ったらガチガチの文学論だった。取り上げられた作家は山本周五郎、吉川英治、司馬遼太郎、藤沢周平、山田風太郎などなど。個人的に司馬、藤沢、山風などは好きなので楽しくは読めた。しかし自分もしっかりとおじさんになったんだなぁw2022/08/02
のびすけ
23
タイトルに引かれて手に取った一冊だけど、期待外れでした。山本周五郎、吉川英治、藤沢周平らを題材に、彼らの生い立ちや人間性、辿ってきた時代背景、それらがどのように作品に投影されてきたかの小難しい文学論がほとんど。「樅ノ木は残った」や「蝉しぐれ」の評論などは興味深かったけど。タイトルの答えとして読み取れる部分は、藤沢周平の評論の中に書かれている次の二つくらいか。武家小説が時代を違えたサラリーマンものであること。時代小説に描かれる義理や人情のようなピュアなものに慰安したがること。さっと流し読みで読了でした。2021/09/05
Mc6ρ助
6
『藤沢周平の章でも言いましたように、時代小説は現代小説の変種ですし、藤沢周平は会社やサラリーマンというものをばかにしない人で、会社やサラリーマンを化政・天保期の東北の小藩海坂藩に映し出したということもあるのですが、その小説には二百年をつらぬく日本人の姿にたしかなリアリティがありました。経済成長しなくても、人々の暮らしは満ち足りたものになりうると、藤沢周平は説得力を持った物語で語ってくれたのです。(p255)』剣豪小説、時代小説、チャンバラ小説・・・異論は色々あるけれど、その愛情に免じて許してもあげよう!2016/09/30
へたれのけい
5
おじさんは面白い小説が好きなんだよ、と応じておきますか。2018/10/18